安藤美姫とマリア・シャラポワ

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/19

 ◇その瞳、二つの表情

 練習で真剣なまなざしを見せたかと思えば、飛びきりの笑顔で冗談を言う。米クリーブランドで安藤美姫は、自分らしさを出しつつある。コーチのキャロル・ヘイス・ジェンキンス(65)が証言する。

 「美姫は、磁石のように人を引きつける魅力を持っている。日本で人気のある理由がよく分かる」

 スポーツ選手でありながら、アイドルのように安藤人気は過熱した。試合には多くのファンが詰め掛け、フィギュアスケートでは異例の入場制限が設けられることもあった。

 五輪未経験者で唯一、日本オリンピック委員会(JOC)の肖像権ビジネス「シンボルアスリート」に名前を連ねる。ハンマー投げの室伏広治、柔道の谷亮子の両五輪金メダリストやフィギュアでは村主章枝(24)と荒川静香(23)ら計11人。JOCに肖像権を預けて協賛企業のCMに優先的に出演する代わりに、協力金として年間1000万~2000万円を受け取る。

 安藤は複数のCMに出演。任天堂のゲームソフトのCMを担当した電通関西支社京都営業局の山本貴嗣は「スポーツ選手の厳しさと、普通の女子高生の親しみやすさを持ち合わせている。反響は上々。業界内では『よく起用できましたね』と声を掛けられる」と話す。

 「人気先行」は本人が最もよく承知している。「まだオリンピック代表に選ばれてもいないし、世界選手権のメダリストでもない。私なんかがという気持ち」。一方で「CMなどを通じ、多くの人がフィギュアに興味を持ってもらえれば、うれしい」とも話す。五輪シーズンが近づくにつれ、再び予想される熱狂にも浮かれる気配はない。=敬称略=つづく<文・張智彦/写真・貝塚太一>

毎日新聞 2005年6月7日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-06-08 23:46