安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/11
安藤美姫のジャンプは美しい。踏み切りから動きに無駄がなく、高速でも回転軸がほとんどぶれない。広々と使える北米のリンクで最も楽しそうに見えるのは、大好きなジャンプをしている時だ。
「今の美姫があるのは先生のお陰」と言う人物が地元・名古屋にいる。名東フィギュアスケーティングクラブのインストラクター、門奈裕子(39)だ。安藤は8歳から約4年間、基礎を教えてもらった。
門奈は個々に応じた踏み切りのコースや跳び方を素早く把握する。それを反復させることで体に染み込ませていく。3月の世界ジュニア選手権で初優勝した浅田真央(14)と姉の浅田舞(16)も門奈の元でスケートを始めた。安藤が4回転なら、浅田真央は男子でも難しいトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決める。有望株を次々と育てる門奈を、日本スケート連盟フィギュア強化部長の城田憲子(58)は「回転軸のしっかりしたジャンプを教えられる」と評価する。
門奈の指導には、おもちゃ箱のような工夫が詰まっている。小学生だった安藤は練習が楽しくて仕方なかった。2人1組でのジャンプ練習は、決められた要素を2人そろって出来ないと次に進めない。腕立て伏せや腹筋などの罰ゲームだけではない。「1番になった組にはドーナツを買ってあげるよ」。先生の声に子供たちは目の色を変えた。門奈は言う。「ものがほしいわけじゃない。ゲームみたいに盛り上がり、応援するのが楽しいんです」
夢中になって氷上を跳びはね、笑顔が絶えなかった名東クラブ時代。「ジャンプの仕方とか、今も先生に言われたことを思い出す」。海外の地でも安藤は原点を忘れない。=敬称略=つづく
毎日新聞 2005年5月23日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-05-23 19:12