安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/10
北米にやって来て2週間が過ぎた15日、安藤美姫は初めて氷の上に乗らなかった。ダウンタウンにあるネイルサロンで、バラの花をあしらったピンクの新しい付けづめを見つめながら、つぶやいた。「フリー(のプログラム)用にと思って」。オフもスケートのことが頭から離れない。
この日は、いろいろあった。早朝、宿泊しているトロント市内のホテルで火災報知機が響き渡った。パジャマ姿で5階から非常階段を駆け下り、ロビーに避難した。2階の火災は幸いボヤで済んだ。
午前中は、出発から付き添っていた母明美(40)とインストラクターの樋口豊(55)が帰国の途についた。空港で2人を見送った後、ネイルサロンへ。4月に付けたブルーのつめが外れ始めて気になっていた。
日本を離れても、なかなか気を緩められない。
振付師、デビッド・ウィルソン(39)とのプログラム作り以外にも別のスケート場で1~2時間の自主練習に励む。4回転ジャンプを女性で唯一決めたスケーターは異国の地でも有名人だ。「日本のチャンピオンだから」とリンク代を受け取ってもらえない。新しいプログラムの曲に合わせて滑り始めると、他の選手が練習を止めて見入る。
「美姫に、あまり気を使ってほしくないのに」と言いつつ、今何をすべきかという自覚はある。
リンクに立たなくても、ビデオを見て振り付けの研究を怠らない。ホテルの部屋や移動の車の中では、新プログラムの曲をかけてイメージ作りに没頭する。
買い物が好きで、友達と大騒ぎするのが楽しくて仕方ない。そんな女子高生の顔つきが、少しずつ変わり始めている。=敬称略=つづく・次回は23日の予定<文・張智彦/写真・貝塚太一>
毎日新聞 2005年5月21日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-05-22 04:21