安藤美姫とマリア・シャラポワ

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/7

 ◇音楽、ハートで感じて

 フリーの新しいプログラムの曲を聞いて安藤美姫は驚いた。しとやかで、少しつやっぽい大人の女性のイメージだ。「これまでの自分からは想像できない」

 女子のプログラムはショートが2分50秒以内、フリーが4分前後と決まっている。バレエやオペラ、映画音楽などを凝縮したものがほとんど。物語やテーマを自分の中に取り込み、限られた時間と空間の中で表現しなければならない。

 これまでの安藤は、躍動感や奔放さを前面に出したプログラムが多かった。04~05年シーズンのショートは情熱的なジプシーが題材で、フリーも速いテンポの部分が大半。代表作のように言われ、今年3月の世界選手権で復活させたバレエ曲「火の鳥」は大空へはばたく不死鳥だった。

 そして、五輪シーズン。新しい振付師、デビッド・ウィルソン(39)はショート、フリーとも、ピアノとバイオリンをメーンとするしっとりとした曲を持ってきた。「音楽をハートで感じ、曲の中に自分を沈みこませる。観衆やジャッジも気にならないほどに……。美姫に、それが出来れば、怖いものはない」

 4回転を女子で初めて成功させたジャンプの能力はだれもが認める。雰囲気たっぷりの振り付けをこなせれば、新コーチのキャロル・ヘイス・ジェンキンス(65)が求めるエレガントさを一層、アピールできる。

 「火の鳥」を除けば、提示された数曲の中から自分が気に入ったものを選んでいた。だが、今回はウィルソンの思いが詰まった曲を受け入れた。「難しいけど、しっかりと演じられれば……」。殻を破って飛躍する自分の姿を安藤は思い浮かべている。=敬称略=つづく<文・張智彦/写真・貝塚太一>

毎日新聞 2005年5月18日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-05-22 03:55