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「初音ミク」現象が拓く“共感”力の新世界――伊藤博之・石川康晴・猪子寿之 特別対談(5) - 12/10/01 | 12:15


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 ヒントになったのは、フリーソフトウエアや「クリエイティブ・コモンズ」の考え方。著作権法によって作品の改変を禁止するのではなく、作者が一部の権利を開放することを宣言して、利用を促進し、第三者との共同作業によって完成度を高めようというムーブメントです。

 実際、知識というのは金庫の中に10年間しまい込んでも何も増えない。自由に泳がせ、利用させたら、よほど価値が膨らんで返ってくる。そのことは初音ミクの5年間でイヤというほど見てきましたから。

猪子 まったくのゼロから創作した人なんて人類史上、一人もいない。生まれた瞬間、何の情報もないまま、いきなり創作することなんてないと思うので。文化の連続性、先人の表現の積み上げの上に、今がある。すべての表現はN次創作なんだけれど、(著作権法で)怒られるからウソをついてきた。法律の網の目をくぐる節税対策みたいもの。(初音ミクのおかげで)そんな小ざかしいことが吹っ飛んだ。すべてはN次創作。堂々と、やれるようになったっていうか。

「密」から「疎」へ既存戦略は無意味

伊藤 オープンカルチャーというか、こういう考え方はビジネスの新しいイノベーション、プロモーションの新しい方向でもあると思います。僕は「密結合」と「疎結合」と言うんですが、自然界って「疎」ですよね。花が咲き、蜂が飛んできて蜜を吸い、体に花粉が付いて別の花に運ぶ。両者は特に契約書を交わしているわけではない。

 反対に、銀行と銀行の統合のような人為的な「密」な結合は、必ずといっていいほどトラブルが発生するじゃないですか。労使関係や企業の契約関係もそう。不自然で非効率的な「密」のリスクを減らしていくのが合理的だと思う。

 インターネットでいろんな人が自由につながる状況下、既存の(「密」な)考え方をいったん白紙に戻し、最も適合的なスタイルは何か、考えていくべきでしょう。

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