ここから本文エリア 企画特集1
(下)海岸線の隆起は「地震」2012年05月02日
■国は否定説追認、学者ら異論 東洋大の渡辺満久教授と広島大の中田高名誉教授らは、土地の変形を手がかりに活断層を見つけてきた。中田氏は、島根原発(松江市)で中国電力が否定していた活断層の調査に乗り出し、陸地を掘ってその存在を証明した実績を持つ。 「大間原発沖に海底活断層がある」と2008年秋に指摘した根拠は、海岸線の隆起だ。 下北半島の大間崎周辺にある約12万年前の海岸線の地形。その標高は約60メートル。それが、10キロ南の大間原発近くでは20メートル以下と、急激に低くなっていた。 大間崎周辺では、波で削られた古い時代の浅瀬が隆起し、現在の海面より上に顔を出す「離水ベンチ」(岩棚)が階段状に残っていた。500メートル沖合の弁天島では3メートルの段差が2段あり、陸地となっていた。 渡辺氏らは「弁天島の北側、函館寄りの海底から大間原発の地下にもぐり込む活断層がある」と分析。この活断層が繰り返し地震を起こし、海側が隆起した、と結論づけた。 そして、地層のずれは津軽海峡に沿って東西に四十数キロに及び、マグニチュード7級の大規模地震を引き起こす可能性がある、と警告する。 大間原発の建設許可が出たのは08年4月。渡辺氏らが海底活断層の存在を指摘した時には審査は終わっていたが、電源開発は指摘を受け再調査に着手、09年秋に結果の一部を公表した。 その結果、離水ベンチがあることなどは認めたが、「縄文時代に海水面が下降してできた。土地の隆起は『非弾性変形』と呼ぶ現象」として地震による隆起を否定した。火山地帯では地下の岩石の温度が高いために変形しやすいとの考え方だ。保安院も、その判断を追認する。 だが、海底活断層の存在を指摘する変動地形学者らは増えている。根拠にするのが「断層関連褶曲(しゅうきょく)」との学説だ。 地層が波状に折れ曲がって隆起していれば、地下深くに活断層があると考える。柏崎刈羽原発が被災した07年の新潟県中越沖地震では、地震前後に海底を音波探査したが活断層が見つからず、一気に注目された。電力業界もその学説を認めざるを得なくなったという。 東京大の池田安隆准教授は「保安院が推定活断層として示した位置とは別の場所に地層の変形がいくつか読み取れる」と分析。千葉大の宮内崇裕教授は「地形の変化を分析し、その原因は津軽海峡に活断層があるからでは、というのが渡辺氏らの指摘では重要。ピンポイントで活断層の位置を言い当てようとしたのではない」と指摘する。 そして2人は「大間崎沖にも褶曲構造がある。音波探査で活断層が見つからなくても、活断層がないとは言い切れない」と、口をそろえる。 一方、電源開発が隆起の原因と主張する「非弾性変形」については、この学説を唱えた東北大の長谷川昭名誉教授ですら首をかしげ、こう指摘する。 「非弾性変形は地震波を使って検証する。この学説は東北地方に連なる火山地帯ができた背景、といった大きなスケールでこそ検証できる。大間崎のような限られた場所での実証は無理ではないか」 電源開発の再調査には海底音波探査なども含まれる。すでに調査は終わったとしているが、「なお分析中」として結果は公表していない。 (この連載は綱島洋一が担当しました)
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