記者の目:欧州から見た領土問題=斎藤義彦
毎日新聞 2012年10月03日 00時19分
沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)、島根県・竹島(韓国名・独島)を巡り、中国・韓国と日本の対立が続いている。遠く欧州連合(EU)の本拠地ブリュッセルから見ると、日中韓の対立は歯がゆく思える。EUは互いに殺し合ってきた歴史を越え、債務危機を機に統合を深めている。100年かかってもいい。日中韓は共同体をめざすべきだ。それ以外、安定し繁栄した東アジアの将来はない。
◇アルザスを巡り、独仏血の争奪戦
ドイツの外交官との会話から始めたい。尖閣問題への意見を聞くと「小さい無人島でしょ。日中で共同管理すればいい。なぜ対立するのかわからない」と言う。ナショナリストでない私もムッときた。「国際法上は……」と反論しようとする私に彼は言う。「確かに名誉の問題だ。でもアルザス地方を巡る独仏の対立とは比べようもない」
アルザスはドイツに接したフランス北東部で、資源に富むことから独仏が血で血を洗う奪い合いを行ってきた。8000平方キロを超え百数十万人が住むこの地方で、占領のたびに住民の追放や言語・文化の強制変更が行われた。今ではアルザスは欧州議会も抱え、独仏だけでなく欧州の十字路として発展している。
日中韓の広い交流から見たら、島を巡る対立はあまりにも小さな問題だ、と欧州から見られているのは事実だ。