建築分科会 コーディネーター 上里 孝三 沖縄県 (株)国興建設 代表取締役 パネリスト 露木 尚光 千葉県 日本大学理工学部教授 会田 伸一 北海道 アイ企画設計事務所 仲宗根 正勝 沖縄県 具志川市役所建築課 平方 成治 東京都 (株)泰平不動産 代表取締役 仲宗根正勝、会田伸一、平方成治の3氏の実例報告にさきがけて、土木建築の材料化学(無機系)を専門とする露木尚光教授によりシックハウスの化学的背景について説明がなされた。現在、シックハウスの対象はVOC(揮発性有機化合物)のホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、木材保存剤、可塑剤、防蟻剤など6種類が優先取組物質となっている(健康住宅研究会)。ホルムアルデヒドの主要成分は催涙ガスに使用されるもの、またトルエンはシンナーの混合溶剤(65%)として用いられている。 使用される化学物質を建築材料別に見ると−。合板・化粧板・糊・床・ビニールクロス・プラスチックには、有機剤の接着剤、防カビ剤、可塑剤の混合使用。塗料剤には、トルエン、キシレンなど、有機系の7種類。接着剤には有機溶剤やホルムアルデヒドが使用される。また、コンクリート壁面に付着する藻、苔の発生から防カビ剤が必要とされるメカニズムも解説。これらは、有機系のためシックハウス症候群をまねくが、無機系はまだ開発されておらず、有機系に頼らざるを得ない現状を述べた。 ホルムアルデヒド測定方法については、<1>マントルヒーターに熱をかけ溶剤を飛散、集管で量を計る。<2>密封状態でガスの発生量を計る<3>逆に空気を入れた方法などを紹介。 ホルムアルデヒド室内濃度指針値として放散の基準値、0.1mg/m2(0.08ppmに相当)で、日本の安全値数はWHO基準と同じとされている。 仲宗根氏は、公共建築物初のEM活用である具志川市営バンガロー・キャンプ施設の実例を報告。同施設は、天願川上流域にあるため、汚水・環境対策にEM浄化槽で知られる具志川図書館のノウハウを最大限に活かした。まず、着手時に水タンク内にEMセラミックスを吊り上げ、敷地全体にはEM1号1000倍希釈液とEMセラミックパウダーを散布し、工事用水と敷地内にEMを処理。基礎用コンクリートに、中性化・塩害・アルカリ骨材反応による劣化を防ぐ目的としてEMセラミックパウダー埋設1kg/m3、EM-Z 0.2kg/m、EM1号2kgを混合し,ジャンカや臭いが出ない結果を得た。汚水枡内にもEMコンクリートを使用し、埋設管にもEMセラミックスを散布。浄化槽は具志川市立図書館同様、EMセラミックス5kgを吊り下げた。 中水タンク内は1年後、臭いがなくなった。屋根下地材にEMーXパウダーを混入し組み立て、特有の臭いを解消。白アリ駆除剤は使用せず、EMーZ3%液と沖縄特産の月桃オイルのブレンド液を床下に散布。また斜面からの赤土流出防止のため、EM1号、ボカシ混入液を散布し、現在はコケや樹木の発生をみている。内部では、イグサ、照明器具にEM製品を使用。それぞれの機能の効率を上げていると報告した。 平方氏は、地下1階、地上3階、敷地面積約395m2の自社貸付ビルの建築に初めてEMを活用。「家は海に浮かぶ船のようなもの」の考えから、大地の活性化として地下7m掘り、EM1号の活性液を1万倍に希釈し1日1200リットル、28日間散布。また土壌には炭の代用としてEMセラミックスを撒いた。生コン打設時には1m3に対し1.8kgのEMーXセラミックス粉末を投入。鉄骨のサビ止めを図り、塗料にEMセラミックス粉末を混入。サビの付きが遅い結果を得た。外装用特注タイルは1枚75kg中、数%のEMーXセラミックス混入率で、焼き上りが緻密な仕上げとなった。内装材のクロス接着剤にはEMーXを混ぜて貼り付け、仕上げ時から悪臭の除去効果を得た。拡散式ドチュウムにより残留ホルムアルデヒドを計測したが反応はなかった。水処理は具志川市立図書館を手本にした36時間循環のEM中水道システム。ビル建築の随所にEMを組み入れた工程を一覧表にして詳細を報告した。 会場の参加者から<1>コンクリートの高強度化や耐久性、抗酸化にどれが有効か<2>糖蜜の混入に虫の心配は<3>EMがVOCを抑えるメカニズムについて<4>抗酸化溶剤の内容などの質問に対し回答は<1>工業用に開発されたEMーZ3%を使用(仲宗根氏)<2>良質な拡大培養液を使用していれば防虫効果あり。PH3.5以下では害虫が発生しない<3>ホルムアルデヒドがEMの鉄分と結合すると安定した形となって人体に害を及ぼさない。(露木氏)<4>クロス用の糊、EMセラミックス水、抗酸化溶剤を混ぜてクロスを貼る(会田氏)。コストに対しては、使用割合に対して効率の良さがEMの特長と回答し、ユーザーと施工者側の共同責任において使用している現状であると締め括った。 |
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