EMフェスタ98 > 専門分科会
収穫向上における EMの役割

農業分科会

コーディネーター

屋宜 芳文    (EM研究機構)

パネリスト

大城 松健    沖縄県 花き栽培
平良 敏彦    沖縄県 サトウキビ、肉牛業
高野 武治    山梨県 果樹栽培


堆肥づくりと病害虫駆除
 大城氏は、沖縄本島南部の糸満市で、鉢物の花木50〜60種類、約20万鉢を生産している。 
 栽培用の土も商品なので、できるだけ軽くすることに工夫を凝らしてる。EMサイオン1号の10,000倍液と尿素1000倍液を混合したものをサトウキビのバカスに散布し、2〜3回切り返しをして腐熟化を促進させる。これに島尻マージを原土にした保水、排水性の高い用土に混ぜ、室内で約1カ月間寝かせたものを鉢物の用土として使用している。
 追肥にはEMボカシを使用している。EMボカシの配合比は米糠3、油粕2、魚粉1、骨紛1で、水分含有量を10〜15%に抑えて作っている。
 病害虫の防除には10日から2週間おきに、EMサイオン1000倍液と木酢液500倍を葉面散布している。ポットマムに白さび病が発生したときには、EM1号500倍液と木酢液300倍を使用している。
 鉢栽培では用土の量が限られるので路地栽培並の効果は得られないが、生育が若干早くなって、葉や花の色艶が良くなった。下葉も枯れないという効果も出ている。しかも少量で済むという。また、病気が少なくなり、農薬を散布する回数を減らすことができたと報告された。

EMで収穫が向上

 EMと出会って11年になる山梨県の高野氏はブドウ栽培にEMを使い続けるとどうなるかという期待を抱いて始めた。
 当初は、好気性菌を中心に醗酵させた資材、合計400kgを年3回分けて投入して、土壌改良を行っていた。現在は剪定した枝を消し炭にして粉々にし、EMの希釈液を染み込ませたものを有機資材へ混ぜ込んで嫌気ボカシを作っている。EMの醗酵資材主体で栽培すると、新梢の節間が詰まり且つ丈夫になり、有核率が非常に高くなる。ぶどう一つの粒が15〜20gにもなり、全ての糖度が17.5にもなるのはには驚いている。10ア−ル当たり4,200kgをコンスタントに収穫している。草を刈ってボカシを振るだけで、10日も経つと有機緑肥として使えるなど、有機肥料として非常に早く土壌に還元できるようになった。コントロールが容易で作業の省略化につながっていることも利点のひとつという。オリジナルワインは飛ぶように売れ、毎日のように午後になると品切れになる程好評である。
 
EM堆肥はサトウキビに抜群の効果
 沖縄本島の南西にある宮古島で牛の生産、サトウキビの栽培をしている平良氏はかつては農薬や化学肥料を使っての農業を営んでいた。甲状腺機能亢進症という病気を患ったおり、比嘉照夫教授の著作に出会い、EM-Xの効果でその病気を克服した経緯を持つ。それをきっかけにEMを牛に応用したところ、日に日に毛並みが良くなり、繁殖障害も改善された。生まれたばかりの子牛に下痢症状を起こすものが多くいたが、それも全く見られなくなった。堆肥の臭いも無くなり、そのEM堆肥を10アール当たり10トン以上使用したところ、サトウキビが驚くほど成長して糖度も高くなった。ここ数年は専ら苗用として利用されており、サトウキビ苗に対するEM効果を10点挙げた。1.発芽率が非常に良く、一斉に発芽する。2.病害虫に強く農薬が要らない。3.台風や旱魃に強い。水捌けが良く、大雨の時でも水が溜まらない。4.成育が良く、一月に33cm以上伸びる。5.糖度が高い。6.立ち枯れがない。7.株出しが多く出来るので連作が可能。8.低コストでできる。9.サトウキビの収穫は重労働だがEMの抗酸化波動により作業が楽しい。10.環境を汚さない。
 EM拡大活性液はモミガラ、月桃、サトウキビの葉、ニンニク、ハーブにEM-Xセラミックスの微粉末を加えて海水100%で作っている。ボカシはフスマ、モミガラ燻炭、ゼオライトを入れて3週間以上嫌気醗酵させ作っている。堆肥は牛糞、刈り取った雑草、落ち葉、おが屑で作っている。今年は何十年ぶりかの60日にも及ぶ旱魃に見舞われたにも係らず、その影響を感じさせなかったのはEM堆肥の効果であった。このことは新聞にも取り上げられた。

自分に合った使用法で
 最後に、EMを使うことによって苦しい農業から楽しい農業へ、儲からない農業から儲かる農業へ、環境を汚す農業から環境を守る農業へ転換できることを述べて締め括った。
 3氏の発表の後、コーディネーターの屋宜氏からEMを使っていくにあたって、土作りの観点から特に留意している点についての質問が出された。
 大城氏は、「観葉植物の場合は、用土を軽くすることが最も重要です。次に排水性、保水性を物理化学的に、生物学的に良くすることです。生物学的に良くするためにEMを活用するということです」と答えていた。
 高野氏は「園のものは園に返すというのが基本です。雑草でも何でも生えていたら、醗酵資材のボカシを利用して緑肥として還元することです。」と答えた。
 平良氏は「EMの住み処を考えて堆肥や緑肥をたくさん作ることです。」
 高野氏、平良氏は土壌にいかに微生物を繁殖させるかという、そのための管理を中心に取り組んでいる。土作りができない大城氏は、化学肥料のみで育てると、徒長気味に成長して病害虫が増えるが、ボカシを使いだしてからは丈夫に育つので農薬散布の回数も減っていると感じている。
 パネリストから報告されたEMの使い方、その効果や失敗例を参考にして自分なりに味付け或いは調理して皆さんの現場で生かして頂きたい、とコーディネーターの屋宜氏は締め括った。