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EMが畜産環境に果たす役割について

畜産分科会

コーディネーター
寺本 さゆり    (EM研究機構)

パネリスト

仲田 繁市    沖縄県 肉牛業
玉城 弘     沖縄県 酪農業
棚橋 力     岐阜県 養鶏

 沖縄本島の南西にある宮古島の城辺町で肉用子牛の生産を主体に畜産経営をしている仲田氏は、子牛のもつ遺伝的、潜在的能力を十分に発揮させようと、EMを利用した醗酵飼料を与えている。1日1kgを目処に飼育、10ヶ月弱で270kg達成に成功している。県平均である体重227kg、体高106cm、宮古島平均である同244kg、同108cmを優に越し、全国平均である同268kg、同109cmを上回る成果を上げている。
 栄養管理、衛生管理を十分に行う過程でEMが威力を発揮している状況が報告された。
 ハエを防ぐこと、悪臭を無くしハエの発生を防ぐことで、衛生面での牛のストレスが解消され、畜舎での快適な環境作りに成功している。近くに団地等の住宅地があるが、苦情は無い。むしろ、付近の子供達が牛に興味を持ち感心を高めているとのこと。
 母牛の繁殖の効率無くしては子牛の伸びは難しいことからも、子牛に留まらず母牛の健康状態が良くなったことも繁殖面でもEMの効果が認められる。
 今後の対策として、畜産農家の高齢化を挙げ、これらの農家をいかにして手助けしていくべきか。農業、畜産面でかなりの化学肥料が使われており、それによる地下水の汚染問題の解決ためにEM普及を挙げている。
 最後に、若者が畜産に取り組めるような素地作りをすることを責務と考え、EMの精神を共有する仲間の輪を増やし計画的組織的に廻り、一緒に取り組んでいきたいと抱負を語った。
 岐阜県の棚橋氏は養鶏との係りが長く、当初は1万5千羽の規模で薬漬け、公害だらけの養鶏を強いられていた。それから脱却するために16年前に岐阜の山奥で土着菌を採取、培養に成功した後、微生物農法へ転換し無公害の養鶏を目指した。養鶏仲間からは無視されながらも、10年間試行錯誤が続いた。6年前、農協婦人部で活動する棚橋氏の奥さんを通して、ゴミ処理に有効なEMを知る。養鶏の規模を5万羽に拡大すると同時にEMをドッキングさせ今日に至る。
 棚橋氏は、乳酸菌と放線菌を織り込み卵黄等を調合した、独自に開発した活性液に醍醐液という名前をつけている。ボカシも米ぬかをベースに桧の木炭粉等を使い独自の調合をし、醍醐素という名のボカシを開発した。さらに納豆菌、宮入菌等を織り込んだ飼料添加用の醍醐素も作っている。EMを餌に混ぜることにより、アレルギー、アトピー症のある子どもも安心して食べれるという一面も出てきた。醍醐卵として商品化され親しまれている。
 一日の死亡数が15〜20羽だったのが3羽にまで減少したことは、鶏が健康になったという証でもある(EMが悪玉菌を抑え、且つEMの作り出す酵素やビタミン群が鶏の健康を維持する)。そのことが生産量の安定に結びついている。屍鶏も堆肥にしている。
 独自の菌で今まで果たせなかった悪臭対策がEM導入後に成し遂げられた。畜産農家から出る有機堆肥は機械化農業万能の時代には受け入れられなかった経緯があったが、EM導入後には堆肥として効果が高く、畜産廃棄物の問題は解決した。周辺の農家の人達にもEM堆肥を使うと作物の品質が向上することが理解され、鶏糞の有機堆肥も“ちから”というネーミングで販売し、これも人気商品のひとつとなった。今ではうれしい悲鳴をあげている。
 最後に、周りの人達を大事にし融和を図っていくことが販売にも大きく左右するということを付け加えた。
 沖縄本島南部の大里村で玉城牧場牛乳を経営する玉城氏は、飼育乳牛から牛乳まで一貫した生産を行っている。現在1日の生産量が7.58トンあり、ILパックに換算して8000本を出荷している。消費者から比嘉照夫先生の本が送られてきたのを機にEMに取り組んだ玉城氏は当初半信半疑だったという。EM1・2号、拡大液、ボカシ等を飼料、飲み水に散布してからは、牛が健康になり、乳房炎に患う牛が出なくなったこと、悪臭が完全に消えたことでEMの効果を確信するに至った。特に抗生物質を使わずに済むことに満足しているという。製品は玉城牧場EM酪農牛乳というブランドでアレルギー、アトピー症をもつ人からも好評を得ている。EMに取り組み出してから3年。EMの世界は奥深い。いろいろな方の指導を受けながらEMを究めていきたいと報告した。
 3氏の報告を受けてコーディネーターの寺本氏から問い掛けが出され、畜産環境に果たすEMの役割について効果があった点を各氏が挙げた。
 仲田氏は子牛の健康状態が良くなったこと、衛生面でのストレスが解消されたことを挙げた。また悪臭が消え団地の皆さんからも牛舎には臭いがないと言われ、堆肥を使った畑の土壌が改良され肥料効果が出ているとした。
 玉城氏は悪臭が無くなったこと、乳牛が健康になったことを挙げている。
 棚橋氏は、鶏が健康になるということは否めない事実で、過去にブドウ状球菌症という病気があったが、EMの活性液を撒くだけでその病気が無くなった。しかし、EMの効果は農場全体で永続使用して初めて現れるもの。ある部分のみ使用するような薬感覚で使用しても効果は全く無いに等しい。長く使うことが大事だと思うと語った。
 3氏のパネラーの応答に対して寺本氏は、畜産環境におけるEMの効果として、健康状態の向上、悪臭の対策、畜産廃棄物の農地還元が可能になる3点に総括した。
 最後に3氏が将来の目標として次のように語った。
 若い人達が畜産に取り組めるように計画的、組織的に草の根運動的な方法で仲間を増やしていくことが大事(仲田氏)。
 畜産廃棄物の農地還元を可能にするためにも仲間を増やすことが大事である(玉城氏)。
 仲間を増やすことが大事だと思う。畜産に関わる難問を解決しない限りは後継者が育たない。そして後継者が育つような畜産を目指していくには、地域住民の方々に納得し応援してもらうような、また融和が図れるような畜産経営でなければならない(棚橋氏)。