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水処理と環境保全

水処理分科会

コーディネーター
安里 勝之    (EM研究機構)

パネリスト

濱川 隼一    具志川市立図書館資料係長
宮本 学     茨城県北相馬郡藤代町役場 総務部企画課課長補佐
岡 正典     EM研究機構
左納 久仁美  (株)愛媛コンサルタント代表取締役
 満席となった会場、定刻通り会は進行した。
 コーディネーターは安里氏が各人のプロフィールを紹介し、パネリストのプレゼンテーションが始まった。

EMによる水質浄化

 最初に岡氏がEMによる水質浄化の事例として、東京都立川市の国営昭和記念公園での取り組みを紹介。 平成9年12月より園内の人工渓流でEMによる水質浄化を試すことになり、目標を4つ設定した。<1>塩素を使わずに、遊泳場レベルの大腸菌群数に減らす。<2>悪質な藻類の繁茂を防ぐ。<3>川岸から流入して堆積する土壌や汚泥を減少させる。<4>子供達が滑って転ぶことがない川底。以上のことを念頭に浄化に取り組んだ。 
 まずEMと糖蜜を各2リットルずつ水100リットルに混ぜて2週間置き、EM活性液を作る。次に落葉と園内の剪定枝で作った炭を玉ネギ袋につめる。炭にはEM活性液を含浸させている。EMセラミックスを計40リットル(これもあらかじめEMを間浸させている)。以上の資材を水路の要所要所に設置する。
 完成したEM活性液を投入する。1回につき100リットル、冬の間は2ヶ月に1回、春は1〜2週間に1回投入した。 渓流の様子は水温の高くなった4月頃から急激に変化してきた。川底の汚泥とカビがみるみる減るようになった。公園管理人は「年に4回掃除するコケ類がなくなった」と報告している。
 このことから浄化が物理的濾過だけでなく落葉と炭をエサと住み処とする微生物たちの働きによって成されたことが分かる。大腸菌もゼロとなった。 「EMの効果はある程度の時間の蓄積が一定期間経て一気に現われる」と岡氏は語った。

具志川市立図書館におけるEM浄化法
 山岳地を持たない沖縄県は、日本でも平均以上の降雨量があるが水事情が悪い。雨量を蓄えるダムが不足していることに起因する。
 貴重な水を有効に使おうと具志川図書館では、琉球大学の比嘉照夫教授の指導のもと世界初のEMによる中水道システムを採用した。

システムの概要

 従来からある一般的な合併浄化槽にEMを投入し、処理された水を地下の貯水タンクに溜め、その後、中水道として使用している。自己完結型のリサイクルシステムである。 
 EMの住み易い環境を整えるため、1回につき30分程度、1日5回の間欠バッキを行っている。EMを構成している微生物の中には微好気性の微生物が含まれており、攪拌して刺激を与えることによって微生物同士(お互い必要と補完している物質)がスクラムを組んで一生懸命働いてくれるのである。

EMによる汚水処理効

 当施設が供用開始して8年近くになるが、汚泥の引抜きが一度も行われていない。バッキ槽の汚水で測る30分沈降試験では好気性菌主体の通常の浄化槽ではSV値は50〜60%であるが、EM浄化法においては18%である。汚泥が発生しにくい状況を示している。また透視度においても、1m以上と良好である。
 経済性と安全性では汚泥の処理費が不要で、水中ポンプ等の耐用年数も大幅に延びたことで節約ができた。清掃もEM処理水利用で効率よく安全に行われている。
 終りに濱川氏は、地球環境を良くする点からも、今後もEM浄化法に取り組んでいきたいとと話していた。

生物機能を活用した河川の水質浄化法
 自然の持つ浄化作用のバランスが崩れたまま、下水道などの整備や水源の水質保全が伴わなかったことが、今日の水質汚濁の大きな原因だとする宮本氏は、県指定一級河川「相野谷川」で生物機能を活用した浄化を目指すことにした。

水質浄化システムの構成
 水質浄化システムは「微生物培養装置」と生ゴミ醗酵液を多量に抽出する「密封式加圧型醗酵液抽出槽」と醗酵液を底泥に注入する注入器である「クリーン・ウォーター・ガン」、川の源流に設置した「微生物培養プール」で構成されている。
 貧酸素の還元的環境の中で、嫌気性微生物が有効に働きやすい環境をいかに作るかが必要になる。嫌気性微生物群を有機物の分解に最適に順応させるには、密封式加圧型醗酵液抽出槽で新鮮な調理残渣などを醗酵させ、抽出液をクリーン・ウォーター・ガンで微生物培養プールや直接、河川の底泥に注入する。
 このように嫌気性微生物の有機物分解能力を引き出す訓練を経て、底泥やヘドロの中に直接注入する。それによって有機物を嫌気醗酵させ分解流出が生じ、酸素をつくり出しながら下流へと流れ、河川に住む土着微生物などの好気性微生物の活性化を高めて河川の浄化作用を発揮する。
 以上のことで、悪臭とヘドロでドブ川状態の「相野谷川」を生態系が豊かな川に蘇らせることができたと宮本氏は説明した。 

瀬戸内海地域環境蘇生交流の趣旨
 瀬戸内海は、700余りの島からなる国立公園で、世界に誇る美しい内海だと自負する左納氏は、最近汚染が危険なレベルまで達していることを憂えているひとりである。
 瀬戸内海の無人島に他県から運んできた焼却灰が、いま解明しているだけでも210トン埋められている。取り締まる法律がないので、合法的に業者によって急速度に拡大されようとしている。また戦時中毒ガスが瀬戸内海の島に大量に作られたが、その残骸が放置されたままであること等、様々な汚染集積地となっている実情を訴えた。
 左納氏は、瀬戸内海周辺地域が連帯して環境浄化の運動を推進し、毒物投棄の防止や現状の改善に関する基準を法制化して、命を守る具体的な活動を始めていかなければならないと考えている。
 会場では参加者に、瀬戸内海及びその周辺地域の環境浄化プロジェクトを推進するためのネットワーク作りへの賛同を呼びかけた。