EMを活用した洗濯排水の100%
リサイクル・システム の研究 |
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講師● 關口 武雄(玉川繊維工業所会長)
東京都世田谷区を拠点に、群馬 と九州に大規模なクリーニング工場を営む關口さん。鉄道やホテルのリネン類のクリーニングが事業の柱で、EMによる洗濯排水のリサイクルに取り組んでいる。昨年の第13回発表大会で、これまでの研究成果を発表、さらに「地球を救う大変革[3]」でも紹介されている。会場でマイクを握る關口さんは、柔和な表情の中にも環境保全への情熱がほとばしり出ていた。 1993年6月、EMと出合い、独自技術の開発で、1日約300トンの洗濯水を使う群馬工場に自社設備の洗濯排水の100%リサイクルに取り組んだ。 關口さんを揺り動かしたものが、96年2月の米科学誌「サイエンス」に掲載されたスタンフォード大学のグレッチェン・ディリー博士らの水の消費方法に対する警告と、95年の淡路・阪神大震災であった。 群馬工場は、これまでは活性汚泥法で環境基準値以下に処理して近くの河川に放流していた。この排水を100%リサイクル出来ないものかと研究に取り組み、赤虫やミジンコなどの大量発生、白濁化、悪臭、腐敗水の発生などの難題を一つ一つ解決していった。 下図のように 2、混合槽で曝気し循環水(抗酸化水)と混合 3、沈殿槽で汚水を汚泥と活性水に分離し、分離した上澄水のみを沈殿槽に通し最終処理槽を経てろ過、リサイクル活性水に 4、さらに沈殿槽の汚泥は別の発酵分解槽に回収、肥料として再利用可 能となる -と説明。 リサイクルシステムの完成をみて、大型プラントへの挑戦が始まった。 小規模の実験プラントではEMの効果は実証済みであったが、従来の活性汚泥法をいかにスムーズにEM浄化法に切り替えるか―が課題だった。第1の課題はコストの問題だった。300トンの排水を浄化するのに、EMを1%投入すると1日60万円も掛かってしまう。 そこで拡大培養液による実験を試みたが、同液を投入して嫌気状態にしておくと白濁し、悪臭を放ち、赤虫が発生した。培養液の投入率を0.5%〜2%の幅で変え、好気と嫌気状態を繰り返したり、時間のバランスを変えてみたが、嫌気状態では濁りや悪臭が発生。好気状態では、浄化状態の変動が大きく2〜3週間で底に虫が発生したり、浮遊物も多く、透明度も低下した。 このような結果から、拡大培養液は洗濯排水処理には不適当との結論に達し、半年にわたって展開した実験を中止した。
次に「EMが有用微生物群であるならば、(群馬工場の)第3プラントの浄化槽の内部に付着した菌は、浄化系の有用微生物の集合体である」との仮説をたてた。 まず第3プラントの第2槽の内側をデッキブラシでこすり落とし、その濁り水を活性汚泥槽に10トン投入。当日と翌日は何の変化もなく、効果はないのかと思った。 が、3日目の朝、活性汚泥槽の放流口を見たところ、信じられないくらいの清水に。紫色は消え、2メートルの底が見えるほどになっていた。早速、水質検査したところBOD、COD、SSとも3ppm以内になっていた。その後、活性水と有用微生物の集合菌を週1回、10トンずつ3回ほど続けた。 9月に入って、リサイクルテストを開始。洗濯物の白さの度合(白度)、強度、洗浄力、洗剤の使用量などのデータをとって分析。比較検討した結果、実用化に移行できる確信をえるに至った―と、セミナーに入って初めて笑顔を見せた。 黒ずみの進行を押さえ、強度が増し洗剤の使用量が減れば経費節減につながる。リサイクル活性水で洗剤の量を25%減らして10回繰り返し洗濯、洗浄効果と再汚染防止率を測定した結果、通常の量で洗濯した時と比べて全く遜色のないことが裏付けられた。
1、大型、大量の処理を考えると拡大培養液 の完成が必要 2、低コストの有用微生物集合菌の製造法の研究、完成 3、活性汚泥法との共存による性能アップ そして「規模の大小にかかわらず、誰にでも簡単にできるシステムの完成を目指している。実験段階で既に実証済みのシステムをV型と称し、特許申請中である」と、『夢』に一歩近いたことをうれしそうに報告した。 終了後、来場者に囲まれ質問に丁寧に答える關口さん。「このシステムを持ち運べるように小型化したい。そうすれば、淡路阪神大震災のような状態でも水は作れるし、家庭環境も変わる」と語った。 |
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