産業廃棄物リサイクルにおける
EMの可能性と将来展望 |
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産業廃棄物分科会 コーディネーター 山本 博暉 EM研究機構 パネリスト 露木 尚光 千葉県 日本大学理学工学部教授 浅井 重臣 山形県 イーエムワールド技術調査員 高崎 三晴 宮城県 日本ソイル協会副会長/株式会社アクシード専務取締役 産業廃棄物分科会は、このような廃棄物の処理方法、そして資源としての再利用について、分野ごとに各専門家の立場で現状の問題点とEMの可能性についての討論が行われた。会場には約50人の参加者が集まり、討論者の話を熱心に聞いていた。 最初にセメントの科学的な面を研究している露木氏から、巨大産業である鉄鋼・セメントの業界が抱える問題について説明が始められた。 資源リサイクルと高付加価値化を進めるために今後の技術開発が必要であるが、現在、大学ではバイオや新素材の研究が時代の花形で、セメント等の分野の研究者は、わずか数人しかいない。セメント/鉄鋼といった業種は産業の米と言われるくらいに大きな市場を持つが、現在は価格が下がって利益につながらない。マクロ(巨視)的に我が国の現状を考えると、鉄も高付加価値化しないと売れなくなって来ている。 産業廃棄物の問題に関しては、メーカーにはアレルギー(異常過敏症)がある。『廃棄物』などという言葉も使いたがらず、『副産物』といったまろやかな表現でごまかしているのが現状である。 わが国の鉄鋼メーカーは、どこの工場でも『副産物』が山になっている。土木建築にリサイクルしようにも、膨張してしまうので使えない。この膨張をEMで抑えられるかどうかに興味がある。また、コンクリートの汚れや中性化をEMで防げるのか…。何とか新技術を開発しなければならないと考えている。 続いて、土壌のリサイクルを目的とする日本リソイル協会の高崎氏より、汚泥のリサイクル技術についての報告がなされた。 廃棄物に関しては現在の法の枠では対応しきれなくなっている。日本での産業廃棄物で最大なのは汚泥で、管理型処分場の9割を占める。このリサイクルは最優先事項だろう。しかし、いまだ汚泥のリサイクル法は確立されていないのが現状だ。世界的には『アジェンダ21』など以前からリサイクルは言われていたが、現在でも、政策の方向は世界的に統一されていない。 イーエムワールドの浅井氏は、廃棄物を農業分野にリサイクルしていくシステム作りについて考えを述べた。 農業においてはEMボカシで化学肥料を使う以上の収量が得られる。安全な農産物を生産して環境を守ることはすばらしいが、この方法では一つの農家が生産できる量は限られてくる。やはり10ヘクタール規模になると、EMを用いた『資材』が必要になるが、そうするとコスト高はまぬがれない。リサイクルによって資材を低価格で提供できる体制が求められている。 EMはやはり、社会のシステムの中で用いていく事を考えるべきだ。ただしその中に地域性が大きなポイントとなる。例えばメロン作りが盛んな地域では畜産廃棄物(堆肥)は人気があるが、別の地域では堆肥が余っている現状もある。今後は地域に合ったリサイクルを考えなければならないだろう。 以上のような3氏の現状と解決に向けての取り組みを受けて、山本氏は、再資源化の分野は静脈産業と言える。生産という動脈産業中心の文明の中で、大量のゴミが捨てられて来たが、これからはそうは行かない。再資源化して完全なリサイクルにする必要があり、こうした取り組みに国もようやく腰を上げた。ゴミを資源に変える静脈産業は今後大きな位置を占めるだろう。−とリサイクルの重要性を述べた。 今後の産業廃棄物の有効活用が行われれば、これからは違う業種が手を組んで新しい技術を生む時代となる。EMという微生物の世界と産業界がドッキングして、付加価値を高めた新しいビジネスも生まれるだろう。 |
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