EMフェスタ97 > 専門分科会
EM浄化法の
成果と課題
水処理分科会

コーディネーター
稲富 聖宗  EM研究機構

パネリスト

有地 裕之  山形県 鶴岡市浄化センター調整主任
江田 敏弘  東京都 EM水処理事業協会理事長

  中小浄化槽から公共汚水処理場、河川、 湖畔と広範囲に渡って、近年EMを使った汚水処理が国内外で成果を上げ始めている。
 現在、汚水処理で主流となっている活性汚泥法は、処理の過程で発生する汚泥が産業廃棄物の4分の3を占めるなど、水をきれいにする一方で数々の諸問題を引き起こしている。汚泥減量の可能性を持つEM水処理は各界から注目を集めており、この日も多数の関係者が来場した。
 有地さんは、山形県鶴岡市浄化センターで水処理システムの再検討・改善、増設計画に携わっている。平成7年ごろから、下水処理にEMの投入を思いついた。当初の2カ月間の汚泥処理の予備実験はうまくいかず、比嘉教授に指示を仰いだ所、発生してしまった汚泥より、それ以前の水処理の段階からEMを使うように指示された。
 そこで、湯野浜下水処理場の中でも比較的小さい三千トン規模のところで実験を行なった。平成六年の八月から一年間のデータでは、発生固形物量はEMを投入したその前の一年間との比較で32.5%抑制された。ただ、滞留期間の条件を変えた事もあり、その効果によって減ったとみられる量を差し引くと16.4%減になる。
 この校正した16.4%減という数字は、今後どこの処理場でも出せる可能性がある。  経済的な面では、EMの費用は発生固形物量が15%減ればペイできる。また、EMを入れたことで瀑気槽でスカムの発生が減り、250万円程費やしていた薬剤の代金が抑えられた。湯野浜処理場に関して言えば、EMの導入はかなりの効果があったということになる。
 有地氏の現場からのレポートに続いて、各地でEM水処理を指導している江田氏がEM水処理の基本的な考え方をスピーチした。  面白いことに、バクテリアの世界というのは右か左かしかあり得ない。大多数を占める日和見菌は、強いリーダーがいれば、それに従って現場はどちらかに向いていく。つまり、EMが30%、悪玉が70%というのはない。
 バクテリアの世界は変化が出たときはいっぺんにその方向へ向かうために、状況の見極めには注意が必要だ。最初入れたときに変化が出たということはその方向へ行っているということだから、好転反応だと見ていい。 右か左か。EMのリーダーと現場の日和見菌がその方向を向けば臭いがなくなる。中途半端がないと考えるべきだ。  また、微生物層は多種多様のほうがいい。EMは非常に優秀で、何十種とリーダーシップをとっていくが、現場に合わせた日和見菌、つまり協力者がたくさん必要なため、現場の菌も一緒に培養したほうがいい。
 この基本原理を踏まえてEMを取り扱って欲しい。EMを入れるとどうなるか。まず、臭いが消える。消えないのは好転反応がないということ。効くまで入れるというのはそういうことで、微生物層の働きを変えることに有る。
 このような汚水処理におけるEMの基本原理の後、実際の現場で起こる現象の説明も行われた。まだ反応系が少しずつ分かってきた段階だが、EMを入れると処理中の水の色が薄くなる。(例:こげ茶が茶色へ)また、上に汚泥、下に汚泥、真ん中に水という中割れ現象が起こる等−。その他、通常の汚水処理では、微生物のバランスが一度崩れると処理水の水質が悪化し、元の状態に戻すまでに長い期間が必要だが、EMを使っている場合は復帰が早い。水質が安定し、処理水が還元水となる等のメリットもわかってきた。
 このようなEM水処理の効果をさらに発揮させるためには、EMの住んでいる爆気槽(水処理のメインとなる場所)の汚泥を、その前の処理段階の沈殿槽に返送する。EM-Xセラミックを投入する等の方法も紹介された。
 2氏の発表のあと、質疑応答に移り、専門家どうしのディスカッションが行われた。また、一般の参加者からは、主婦の立場から「汚水処理場での方法も大切だが、その汚染源となる一般家庭排水について、米の研ぎ汁や合成洗剤を家庭で処理する方法を専門家として開発して欲しい」との発言もあった。
 水処理は一見化学的に処理されているように見えるが、微生物という生き物を扱う技術であり、実はとても奥が深い。また、考え方としても、微生物を主体にするのなら、施設を大きくして滞留時間を長く取れば水質をきれいにできる。が、人間を主体とすると小さなローコストの施設で、水質基準を満たす程度の薬品処理を行えばいい、という話になる。どちらを選んで行くかは今後の私たちの行動である。ベストはやはり各家庭が汚い水を流さない工夫をする事で、それができるようになったら、素晴らしい世の中になって行くだろう−と稲富氏は最後を締めくくった。