《アート楽しむワークショップ開設 重野 裕美さん》
「オリジナルの傘を作ってみよう」
子どもたちに1人1本、ビニール傘を手渡す。すぐに油性ペンで絵を描きだす子もいれば、じっくり考えた後で慎重にシールをはっていく子もいる。
「想像もつかないようなものがどんどん出来てきているね」
ほめながら、手助けは最小限にとどめ、子どもの自由な発想を引き出す。
作品が完成した後は全員参加でファッションショー風の発表会。
子どもたちは少し照れながら、でも誇らしげに自分の作品を披露する。
「みんな違うすてきな傘になりました」
子どもたちがアートを楽しめる場を作りたい。
ワークショップ「アートときどきエーゴ」を5月から開いている。
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「美術を職に」と短大の講師や中学校の教師に進んだ。
美術が得意ではない子どもが驚くようなきれいな色を出すような場面に立ち会うのが幸せだった。
ただ、進路指導に追われ、他の教科の授業を受け持つこともあった。
「純粋に美術に向き合えない」と感じるようになっていた。
そんな思いを抱いていた時、大好きだった風景が目に浮かんだ。
02〜06年、日本人学校に勤める夫と過ごしたドイツ・フランクフルト。マイン川沿いには、カフェやビール、ソーセージの屋台の合間に、美術教室があった。
子どもたちがいつでも気軽に、美術を楽しんでいた。
自分の2人の子どももそうしていた。
「長崎市のアーケードや水辺の森でも同じようなことができたら」
夢が見つかり、教壇を降りることを決めた。
長崎市在住のクリエーターで英語が堪能な遠藤大作さん(37)と意気投合。
「英語も交えたら幅が広がるのでは」。このひらめきが、英語のゲームや英会話も登場するワークショップにつながった。
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「アートときどき…」は6月までの予定だったが、7月も続くことになった。
商業施設「みらい長崎ココウオーク」でも同様の試みが決まり、活動は広がりつつある。
最近、よくホームセンターに足を運ぶ。
紙や布で花を作った時には、花瓶代わりのつもりで用意した紙コップに取っ手をつけてカゴにした子どもがいた。
「この素材、子どもたちはどんな風に使ってくれるんだろう」
そう想像を巡らす時間が、楽しい。
(大隈崇)