サンデー時評:「もらえるものなら…」なのか=岩見隆夫
2012年06月06日
石原さんが怒ったのと同じ二十五日、人気お笑いコンビ〈次長課長〉の河本準一さんも吉本興業東京本部で記者会見した。母親が最近まで生活保護を受給していたのがばれ、謝罪するためだ。詳細は新聞、テレビが繰り返し報道しているので、ご承知だろう。
一連の騒ぎで、私がいちばんひっかかったのは、河本問題で、
「不正受給の疑いがある」
と厚生労働省に調査を求めた自民党の片山さつき参院議員が、ある民放テレビに出演し、
「河本さんは、周囲に『もらえるものなら、もらっておけばいいじゃないか』と言っていたそうです。悲しいことですね」
と語ったことだった。河本さんが会見で、
「むちゃくちゃ甘い考えでした」
などと涙ながらに反省の弁を述べたのは、ばれたあとの自己保身的な後知恵でしかなく、核心は片山発言にある。
河本さんはまるで自立心がない。片山さんによると、
「河本さんの著書は三十万部売れて、印税収入が四千万円ある。それだけで受給中止の理由になる」
とも言っていたが、高額所得者になってからも、「もらえるものなら……」と税金をかすめ取ることに痛痒を感じていない。日本の社会に生きる一人の人間として、恐るべき精神的未発達であり、自立とはおよそ無縁である。