2011年、日本の右翼団体が東京にあるロシア大使館の前で北方領土(ロシア名:クリル列島)の返還を求めるデモを行い、ロシアの国旗を破り落書きをした。ロシアのメドベージェフ大統領(当時)が北方領土を訪問し、両国の外交関係が最悪の状態に達していた時期だった。日本の刑法に日章旗冒涜(ぼうとく)罪はないが、外国の国旗を冒涜することによって成立する犯罪「外国国章損壊罪」はある。刑法92条では「外国に侮辱を加える目的で国旗や国章を損壊、除去、毀損(きそん)した者は2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する」としている。ロシアは日本に犯人逮捕を要求した。
それに対し日本政府は「外国国章損壊罪は外国公館に掲げられている国旗が対象となるため、(今回の場合は)捜査対象ではない」と弁解した。つまり、ロシア国旗は右翼団体が持参したものだったため問題がないと主張したわけだ。ロシアでは外国国旗の冒涜は無条件に刑事処罰の対象だ。怒り心頭に発したロシア外務省は1カ月後、在モスクワ日本大使館の日本公使を呼び、もう一度捜査を要求したが、日本は同じ理由を挙げてこれを拒否した。ロシア政府は「犯罪を黙認したもの」だとして非難し、日本の右翼団体幹部のロシア入国を禁止することで、怒りを鎮めた。
外国国旗冒涜罪は国ごとに異なる。ドイツと台湾では、自国の国旗と同様に外国国旗の冒涜を扱う。デンマークでは自国の国旗を燃やしても問題ないが、外国国旗を燃やした場合、刑法110条に従って処罰される。デンマーク議会は、この法律を制定した理由を「外交関係の悪化が懸念されるため」と説明した。日本の法律にもデンマークと同じ条文があるが、長い間、極右派が堂々と外国国旗を冒涜している。
今年6月末と7月末、日本の右翼団体が反韓デモを行い、太極旗(韓国の国旗)を踏みにじった。韓日国交断絶を主張し、新宿まで行進した末、太極旗を破り、踏み付けたのだ。デモ隊は太極旗の四方に配された四卦(しけ=易占いで用いられる基本図で、黒い長い棒と、中央の途切れた二つの短い棒で構成される)をゴキブリのように描き、韓国人を虫のように見下した。さらに太極模様(赤と青の部分)を「ペプシコーラ」と嘲弄(ちょうろう)した。極右派は23日にも旭日昇天旗を掲げ、ゴキブリの描かれた太極旗を踏みながら行進した。
1600年代のキリスト教弾圧を描いた日本の小説『沈黙』は、侍たちがキリストの肖像画を足で踏む「踏み絵」の様子を描写した。侍たちは、キリストの肖像画を踏まないキリシタンを、その場で打ち首にしたという。他人を踏み付けることに快感を覚える加虐本能が、日本人の遺伝子の中に今なお流れているのだろうか。国と国の間に争いがあったとしても、相手が大切にしている価値をないがしろにしないというのは、必ず守るべき最後の一線だ。日本文化には以前から猟奇的、怪奇的な要素が多かったが、それにしても最近の日本列島はついに巨大な虫に変化し始めたかのようだ。