C どうでもいいって、行政マンでしょう? 国政に無関心でいいんですか?
B 橋下大阪市長を見てそう思うのかもしれないけど、基本的に市役所のやってることなんて、明治時代から変わってないよ。俺たちの仕事において重要なのはこれまでの蓄積であって、新しい政策ではない。そもそも国から下りてくる政策に反抗するのは不可能だし、そんなことしたいと考えている役所の職員はいない。
A 俺たちと真逆の発想ですね、それは。俺たちは国とか自治体なんて信用してないから、できるだけ「生きていくスキル」を身につけたいと思っている。生きていくスキルとは、すなわち儲けるスキルです。それが社会を生きる上での「武器」になるわけです。
B 何度も言うが、俺はそんなスキルに興味はない。俺たち自治体職員が守り育てるべきスキルはある。それは、地方ならではの企業だったり職人さんが持っている、「ものづくり」のスキル。皆に尊敬されるような技術だ。
A 完全に文部科学省に洗脳されてますね。陶芸家は陶器に詳しいし、電器屋さんは電化製品に詳しい。それで言うなら、俺たちはカネに詳しいんです。カネにかかわることなら、他の業界の人には負けない。
C そんなこと威張って言うなよ、恥ずかしい。
A 恥ずかしいことは何もない。世の中はファイナンスの流動性が担保されていないと発展しないんだ。田舎のお年寄りみたいに、銀行預金に数千万円預けていても、国民全体には何もいいことはない。俺たちのことを虚業とか呼ぶけど、実業を支えているのは俺たちだという自負がある。
C 思ったんだけど、AもBさんも、自分の人生こそが幸せで正しいと思っているでしょう。
A・B うん。
C 年収300万円の俺に言わせてもらえば、どっちも別に幸せじゃないよ。債券が売れた売れないで震える生活も、ローカルな無敵感を味わう生活も。
A じゃあ、お前が思う幸せな生活は何なんだ。
C それがわからないから困っている。
A 少なくとも、Cは小学校4年生から塾に行って、5000万円くらいの教育費がかかっているはず。そんな人間が年収300万円では、どう考えても効率が悪い。非効率なことをなくして最適解を求めることが社会全体の幸せにつながっていくんじゃないかな。
B さっきAくんが言った「この国の教育が間違っている」という意見には部分的には賛成する。CくんがAくんの人生も私の人生も否定するのは、戦後この国が「国家の芯」のようなものを一切提示せずにやってきたからだと思う。
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