「私見ですが、仕事がないと嘆いている弁護士には、仕事を開拓しようという気持ちが乏しい。これが最大の問題です。 以前の弁護士には、依頼者や知人の紹介がないと仕事を受けない『一見さんお断り』の料亭商売をしていた人も多かったけれど、今はそれでは通用しません。
僕は即独組で、自宅へ掛かってくる電話を携帯電話に転送して、24時間仕事をしていました。毎晩外に出ていろいろな人と会い、名刺も月100枚以上は配るというノルマを自分に課した。人との関係を築くために、呼ばれればバスケでも野球でもやった。そうしてコツコツと依頼者を増やしていったのです」
登録費も払えず廃業
企業に雇われる企業弁護士になるのも、生き残る道の一つとK氏は指摘する。
「企業側には弁護士を採用する意欲は十分にあります。ただし、企業が用意している待遇と、弁護士有資格者が求めている待遇に大きなギャップがある。これが企業弁護士が増えない理由です。
新人弁護士は600万円ぐらいは欲しいと思っているが、企業側は大学新卒プラスアルファで300万〜400万円と考えている。弁護士が折れればいいんです。まだ企業弁護士が増えていないこの段階だからこそ、先駆者的に企業に入ることには大きなメリットがあります。
企業の中で十分に経験と実績を積み、それから就職活動をすれば、このご時世とはいえ、イソ弁先には困らないでしょう。弁護士の業務だけに固執せず、広い視野を持つことが、これからの弁護士には必要です」
弁護士という職業のイメージを超えて働く—国内有数の難関試験をパスしても、仕事がなければ話にならないのだ。
都下に事務所を構える40代ボス弁の言葉は、さらに重い。
「弁護士は、所属する都道府県の弁護士会に登録しないと仕事ができません。しかし、登録には毎月カネがかかります。東京では5000円程度ですが、弁護士人口が少ない地方だと、もっと高額です。弁護士は諸々の会費を払うだけで、少なくとも月に2万円以上はかかる。
それだけ払い続けても仕事がない場合には、登録抹消の請求をする弁護士も出てきます。廃業です。日弁連の機関誌『自由と正義』に、毎号廃業した弁護士の名前が載るのですが、最近若い弁護士がよく目に付きますね」
バッジで食える時代は終わり、食うためにバッジを外す者さえ現れた。弁護士の残酷物語は、過酷さを増す一方だ。
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