「横浜のような事件はこれからも増加していくでしょう。近年、ストーカー被害やDVなどの訴訟が増えてきているけど、こうした事件の加害者には常識に基づく判断ができない人が多い。そんな人たちが起こす事件が、7〜8年前から目に付くようになり、年々増えているように感じます」
直接的な暴力のほか、脅迫電話、「殺」「死」などの落書き、ホームページなどへの誹謗中傷の書き込み、威嚇の手紙といった業務妨害は後を絶たない。弁護士会に懲戒請求を送りつけるという手も、よく使われるものだ。
「それが単なるいやがらせや中傷だと分かっていても、懲戒請求された弁護士は釈明の書面を弁護士会に提出しなければなりません。要はカネにならない訴訟を抱えるようなもの。しかもヘタをすればバッジを失うんだから、ものすごい手間暇とストレスです」
(40代のボス弁)
弁護士の悲劇はこれだけに留まらない。冒頭でも話が出た、新人弁護士の「借金問題」だ。
「弁護士になって2〜3年で多額の借金を抱える人が非常に多い。
日弁連が新63期司法修習生にアンケートを取ったところ、回答者の2人に1人が修習開始時点で借金を抱えていました。額は平均で318万円。多い者で1200万円です。これらの借金は、法科大学院の授業料と奨学金です。ロースクールは勉強がハードで、アルバイトをする余裕もない。
だから、奨学金などに頼らざるを得ないのです。結果として修習生は、卒業して弁護士になった途端、借金漬けになっている。弁護士登録をする前に、裁判所に駆け込んで自己破産の申し立てをしなくてはいけないという状態です」(前出・宇都宮氏)
見習いにカネはやらない
ご存知の通り、法律家を目指す者は、司法試験に合格しただけでは活動することはできない。医師に臨床研修期間があるように、法律家の卵にも1年間の司法修習が義務づけられている。
従来、この期間は国が修習生の生活の面倒をみるために、給料を出していた。これを「給費制」という。しかし、この給費制が、今年の秋から「貸与制」に切り替えられる予定なのだ。
「今までは給料として出ていたおカネが、予算の都合上、今秋からは貸付金になる。つまり修習生にとっては、研修そのものが新たな負担増になるのです。
その額は276万円(月額23万円×12ヵ月)から最大で336万円(月額28万円×12ヵ月)。修習生の半数は、すでに平均で318万円の借金を背負っていますが、今秋からはさらに276万〜336万円増えて、約600万円の借金を背負う計算です。弁護士になる頃には借金漬け—そんな弁護士が出てくるはず。可哀想過ぎますよ」
(大阪の法律事務所に勤める30代のイソ弁)
今後、増えすぎた弁護士によるパイの取り合いは、ますます激化し、仕事にあぶれる弁護士は増えていくだろう。そんな時代で生き残るため、「意識改革が不可欠だ」と訴えるのは首都圏で中堅クラスの事務所を営むボス弁のK氏だ。
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