弁護士会には仕事を紹介するメーリングリストがありますが、この前、急な用事で国選弁護の仕事が担当できなくなった旨を流したら、30秒足らずで2件の問い合わせがありました。パソコン画面とにらめっこしているほど、みんな仕事に飢えているんです」
(前出・篠田氏)
年収300万円どころか「200万円でも応募がある」と言うのは、都内で法律事務所を経営する50代のボス弁だ。
「月額10万円でボーナスなし、仕事は事務員と同じような雑用やお使いがメインという条件でも、今は応募があります。事務員だと法律上の代理人を務められないので、イソ弁は裁判所への使い走りに重宝するんです。文句を言う人はいませんよ」
給料がガタ減りになった最大の理由は、弁護士の供給過多だろう。しかし、ほかにも原因がある。先に話が出た'08年のリーマンショックだ。
「金融商品を作る時は、どうしても金融専門の法律家が必要です。M&Aなどを行う場合も同様です。そうした金融専門の弁護士が金融バブルで脚光を浴び、増加した。扱う商品の額が大きいから、報酬も巨額になる。
そこでファイナンス部門が弁護士マーケットを急成長させていったわけだけれど、それがリーマンショックで一気にヘコみ、収入の大幅ダウンや仕事にあぶれた弁護士を生み出しました」
(都内で大型法律事務所を営む40代弁護士)
「もんじゅ訴訟」や「浜岡訴訟」など、数多くの原発訴訟で知られる、日弁連・事務総長の海渡雄一(かいど ゆういち)氏も、こう言う。
「弁護士業界の景気は、以前から冷え込んでいましたが、リーマンショックがダブルパンチになりました。
会社の顧問、あるいは企業間の紛争など、それまで弁護士に頼んでいた仕事を、企業が依頼しなくなったのです。離婚、相続問題などの民事事件も頭打ちになっており、仕事は減る一方なのに、弁護士の数だけは年々増加している。こうした状況の中、弁護士資格はあるものの、実態はフリーターという若手が大量に生まれているんです」
ある程度クライアントを抱えているベテラン弁護士ですら「仕事が減った」と嘆く。「薬害エイズ訴訟」や「カネミ油症事件」などを手がけてきた保田行雄(やすだ ゆくお)弁護士も、厳しい現状を打ち明ける。
「裕福な弁護士なんて丸の内界隈で事務所を構えている先生ぐらいで、ほんの一握りですよ。うちなんかも小さな狭い事務所に秘書1人、事務のバイトさん1人でどうにかやっている状態。何とかイソ弁の1人でもとは思うけれど、給料を払うだけの余裕はありません」
過払いバブルが弾ける
自力で仕事を取るしかないノキ弁や即独の惨状は想像を絶する。
「事務所の一画を借りてノキ弁をやるといっても、タダで軒先を借りられるわけじゃない。間借り料が要る。ところが収入はというと月20万円稼ぐのも大変というのが実情で、本職以外のバイトをやらざるを得ない時もある。即独も同じでしょう」(28歳弁護士)
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