「弁護士の急増にリーマンショックが重なって、イソ弁を受け入れる余裕のある事務所が少なくなり、"ノキ弁"や"即独"が増えていると聞きます。
イソ弁とは居候弁護士の略で、既存の事務所に就職し、先輩弁護士のもとでノウハウを学ぶ弁護士です。一般的には3年から5年で独立しますが、その間、給料をもらいながら修業を積みます。
ノキ弁は事務所に籍だけ置かせてもらっている、軒だけ借りている弁護士で、給料はありません。独立採算制で、自分で仕事を取ってこなくてはならない。そして、司法修習卒業と同時に独立するのが即独です」
ボス弁とは、イソ弁の雇用主である法律事務所の経営者だ。弁護士法人「アディーレ法律事務所」の篠田恵里香弁護士(東京弁護士会)は、司法修習生の指導や管理を行う「司法修習委員会」の委員を務めている。篠田氏は、現場から聞こえてくるのは苦労話ばかりだと語る。
「今年の就職難は特に凄いです。通常、司法修習生は、夏過ぎまでには大部分の人が内定を取りますが、今年はまだ半分近くの人が決まっていないという噂も流れています。
大学生の就職も氷河期と言われていますが、弁護士業界は"超氷河期"。『司法修習委員会』が、法律事務所に採用を働きかけ、やっと『今年は取るつもりがなかったけれど・・・』と渋々採用枠を設けてくれる事務所もありますが、大半の事務所は募集すらしていません」
目下、就活中の司法修習生・Cさんが言う。
「40以上の事務所に書類を送りましたが、ろくに連絡すらもらえない状態で、2次面接はゼロです。今まで何のために頑張ってきたのか、法科大学院の高額な学費を払ってくれた親に何と言えばいいのか、途方に暮れています。
このままだと即独しかない。でも、何の経験もコネもない新人が食えるほど甘い世界でないことは、先輩からさんざん聞かされていますからね。先は暗いとしか言いようがありません」
こんな悲惨な話もある。
「ネットカフェに寝泊まりして、携帯電話1本で事案処理をしていた若い弁護士さんがいるんです。こうなると自分が生きるのに精一杯で、他人の人権なんて言っている余裕がなくなってくる。弁護士本人だけの問題ではなく、市民の権利自体が危うくなってくることを意味すると考えています」(前出・宇都宮氏)
月給10万円でボーナスなし
超氷河期の難関を突破しても、安泰とは言えない。運良くイソ弁になれたとしても給料はガタ減りだ。
「以前は、事務所が最低でも年収500万円ぐらい保障しないと修習生は来てくれませんでした。今は『給料はいくらでもいいから、事務所に入れて下さい』という状況で、年収300万円という話も聞きます。とにかく仕事がない。そのため、かつては『安い』という理由で敬遠されていた国選弁護の仕事も取り合い状態です。
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