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'12/10/1

夫の遺志継ぎ司法試験合格



 4児を育てる専業主婦が、元裁判官の夫の遺志を継いでこの秋、3度目の挑戦で司法試験を突破した。廿日市市の佃祐世(さちよ)さん(40)。「頑張れたのは、子どもや親、友人の協力のおかげ」。感謝の思いを胸に、地域に根ざした弁護士を目指す。

 合格は11日、末っ子の次女優美ちゃん(5)が通う市内のスイミングスクールで、ママ友からの電話で知った。制度上、最後となる3度目の受験。「落ちたら終わり。重圧がのしかかり、怖くて自分で確認できなかった」

 帰宅後、2007年3月に35歳で病死した夫浩介さんの仏前へ。「ありがとうございました」。ようやく一息ついた。

 法学部の学生時代からの長距離恋愛を経て結ばれた。浩介さんは、福岡県や愛知県の地裁で裁判官を務め、05年から広島法務局に勤務。06年夏に自宅で脳腫瘍のため倒れ、翌春に亡くなった。裁判員制度が始まるころ、「将来は子どもに法学教育をするのが夢」と語っていたという。

 「司法試験を受けてみないか」。闘病中の何げない会話。夫の遺志をくみ、四十九日法要の日に夢を受け継ぐことを決意した。小学生から2カ月の乳児を抱えて、法科大学院の受験勉強を始めた。

 実家に身を寄せ、幼稚園への送り迎えの合間や、授乳中に六法全書をめくった。08年、法科大学院に入学して2年後に卒業。だが、1度目の司法試験に失敗。翌年も落ちた。

 三度目の正直となる試験では、子どもの習い事のお迎えを友人に代わってもらうなどして毎日8時間の勉強時間を確保。子どもたちにも我慢をさせた。でも、5月の受験初日は、中学1年の長男直行君(12)が早起きして「頑張ってね」と送り出してくれた。

 11月から、司法修習生として実務経験を積み、最終試験に臨む。「合格は周りの支援、子どもの健康などすべてが整った結果。地元に恩返しをしたい」。夫の分も、法律の大切さを若者や地域に伝える役を担うつもりだ。

【写真説明】司法試験に合格した佃さん。自室には法律関係の書籍とともに、夫浩介さんが写る家族写真も




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