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遺族「真相究明へ」

2012年09月25日

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津谷さんの遺影を前に、裁判への思いを話す良子さん

 秋田市で起きた弁護士津谷裕貴さん(当時55)殺害事件で、殺人などの罪に問われている菅原勝男被告(68)の控訴審判決が25日、仙台高裁秋田支部である。一審の秋田地裁で懲役30年が言い渡されたが、遺族・検察側は無期懲役を求めている。「二度と同じことを繰り返してほしくない」。津谷さんの妻の良子さん(55)は、事件の真相究明に向けた取り組みも始めるつもりだ。

 事件は2010年11月4日早朝に起きた。菅原被告が、拳銃などを持って津谷さん宅に押し入り、怒鳴り声を聴いた良子さんが110番通報した。駆けつけた警察官は、拳銃を取り上げた津谷さんを取り押さえ、その隙に菅原被告は津谷さんを刃物で刺して殺害した。

 事件から1年10カ月。良子さんは、少しずつ新しい生活へ踏み出している。事件直後から廊下に敷いていたビニールシートは今年5月に取り払った。夏からは、生前の津谷さんが撮影した野鳥の写真パネルを玄関に飾っている。今後は季節ごとに、ほかの写真にも変えていくつもりだ。

 それでも、ふとした時に事件を思い出す。「菅原被告が押し入った時、私が外に逃げて追いかけられていたら、夫は死なずに済んだのではないか」。自分の行動で夫を救えたかもしれない。答えの出ない自問自答も続いている。

 第一審の公判で、菅原被告から反省の言葉が聞けなかった。「仮釈放されたら、危害を加えられるかもしれない」。事件を目の当たりにしただけに、出所することを考えると不安が募る。「遺族の思いと、被告が反省していないことを判決に反映してほしい」

 控訴審が終わった後も、良子さんは、真相究明に新たな取り組みを始めたいという。津谷さんは、なぜ現場に到着した警察官に取り押さえられたのか。良子さんは、県警から納得できる説明を受けていない。「警察の対応に不手際があったと言わざるを得ない」。裁判も視野に県警に説明を求めていくつもりだ。

 夫の友人だった弁護士からも、トラブルになりそうな案件を抱えることがあると聴く。日本中の弁護士に同じようなつらい思いをしてほしくない。そして再発防止のためにも、「何が起きたかを明らかにすることが、夫の死に報いる方法だと信じている」と話した。(松崎敏朗)

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