前日計量を終え、クリソン・オマヤオ(左)と健闘を誓う井上尚弥=東京都文京区のJBC本部事務局で(潟沼義樹撮影)
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さあ、伝説の始まりだ−。史上初めて高校時代にアマ7冠を達成したボクシング界のスーパールーキー、井上尚弥(19)=大橋=がプロデビュー戦を翌日に控えた1日、東京都文京区のJBC本部で前日計量に臨み、リミットいっぱいの49キロでパス。対戦相手のフィリピン・ミニマム級王者クリソン・オマヤオ(19)=フィリピン=も48・9キロでクリアした。当日の会場には、井上が兄貴分と慕う、ロンドン五輪ボクシング金メダリスト村田諒太、銅メダリスト清水聡ら4人のボクシング五輪代表が応援に駆けつける。
計量後、井上はコップに注がれたスープを味わうように胃袋に流し込んだ。そして、しみじみとつぶやいた。
専属トレーナーの父・真吾氏(41)の作った特製スープ。井上家では「真吾スープ」と呼んでいる。真吾氏は「鶏がら、ニンニク、ショウガ、タマネギ、シイタケ、ネギ、リンゴ、バナナ、昆布、かつお節などを4時間煮込んで、具材を入れ替えて、結局、作るのに4、5日かかる」と、秘密のレシピを披露。報道陣にも振る舞った。
減量は、試合当日計量のアマチュアの方が試合前日計量のプロより過酷。しかも、インターハイなどは大会が6日間続き、その間ずっとリミットをキープしなければならない。井上も「アマに比べて楽」と話し、真吾スープのおかゆに特製ジュース、ヨーグルトを食べた後、夜は親子丼で締めくくった。
相手のオマヤオは、パッキャオやドネアらを輩出したボクシング王国フィリピンから来た、同じ19歳の若者。これまでKO負けが一度もないタフネスを誇る。初対面した井上は「幼く見えた」と言いながら「腕がガッチリしていて、ボクより太かった。油断できない」と気を引き締めた。
当日は、五輪メダリストの村田、清水ら4人のボクシング五輪代表もリングサイドに陣取り、デビュー戦を見守る。井上自身、アジア予選で不運な判定に泣き、ロンドン五輪出場を逃しているが、アマ合宿で同部屋になるなど兄貴分として慕う村田らの来場に気合が入る。
「せっかく来てもらうのに、変な試合は見せられない。なんだよ、とは言われたくない」と井上。入場曲は、母・美穂さん(40)の提案のワムの「フリーダム」。怪物と呼ばれる大物ルーキーが入場曲通り「自由」に暴れ回る。 (竹下陽二)
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