2012年9月27日
安倍自民新総裁/下野への反省を行動で示せ
自民党総裁選挙で安倍晋三元首相が新総裁に選出された。衆院解散・総選挙が行われれば、民主党の政権維持は厳しいとみられる。安倍新総裁には次期首相に最も近いリーダーとして、総裁選で表明した「日本を取り戻す」という決意を胸に、余念なく政権準備を進めてほしい。
地方党員の支持広がらず
今回の自民党総裁選は、野党にもかかわらず先に行われた与党民主党の代表選挙以上に国民の関心が高かった。候補者による全国遊説は注目された。
その中で候補者らの訴えは、民主党政権下で生じた国難、東日本大震災への対処や領土問題などに集中し、日米安全保障体制の強化など外交・安全保障が盛んに取り上げられた。厳しい経済情勢、外交力の低下によって、中国、台湾、韓国、ロシアなど周辺国が我が国との領土問題で攻勢に出ている。
かつて自民党の長期政権時代には、外交や防衛・安保問題は票にならないとさえ言われた。そのような時代から地道に防衛・安保政策に関心を持って取り組み、自民党きっての論客となった石破茂前政調会長が、1回目の投票で過半数の党員票を獲得し国会議員票の劣勢を跳ね返して1位になったのも、現状打開を期待してのものだろう。
安倍氏も首相時代に憲法改正を唱え、「戦後レジームからの脱却」を掲げた安保通の保守論客だが、党員票で2位だったものの石破氏にダブルスコアの大差をつけられた。有権者に近い地方党員の支持が広がらなかったことは否めない。その理由は何か。自民党が下野したことに対する責任と反省が不十分だったからではないか。5年前の首相辞任について安倍氏は「ご迷惑をおかけした」と詫びたが、自民党自体の反省と教訓を行動で示していく必要があろう。
今の日本の内外情勢は安倍氏が政権を担った当時以上に厳しい。「日本を取り戻す。強い日本をつくる」と唱える以上は自らが「強いリーダー」となり、まず党の立て直しに責任を果たすべきだ。当面は政権奪還を目指す安倍氏には、いかなる苦境をも跳ね返す胆力を持ち、自信を失いつつある日本国民に再生の手応えが感じられるビジョンを打ち出すことが求められる。
また、日本再建に向け政権準備をする際に、記者会見で言及した通り「強力なチーム」作りが鍵になるだろう。決選投票で争った石破氏との協力を既に表明したが、他候補を含む挙党体制の構築も課題となろう。
総裁選中に他候補が、かつて安倍氏の組閣人事が「お友だち内閣」と揶揄されたことを指摘した。大きな政治目標達成のためには多くの人材を活用し、他党の協力を得る必要もある。党役員人事では、リーダーとしての器が問われる。
次期衆院選の公約策定を
安倍氏は保守党の原点に返っての理念・主張で国民の支持を得る意向だが、日米同盟強化のためには集団的自衛権を行使する法環境を整え、領土問題に対処する必要がある。このほか改正教育基本法を踏み台とする教育改革、消費税率引き上げの大前提となる経済成長実現など次期衆院選の公約を策定していくべきだ。