第三の波」 アルビン・トフラー 槌矢 裕子

 

·  経済は、社会生活を営んでいるすべての人にとって必然的に絡んでくるものである。
この本において著者のトフラーは、経済の大きな動きを「波」ととらえて考察している。
そして、世界中でミリオンセラーとなった。

 · トフラーの考察する「波」には大きく分けて三種類のものがある。
トフラーは「人類はこれまで大変革の波を二度経験してきた」と本文中で述べている。
この本は
1980年に書かれたものであり、出版から20年が経過している。
彼がこれから来ると述べている第三の波はもう十分現在の社会システムである。 

· 第一の波は農耕社会と呼ばれるものである。
生産は必要なものしかされず、消費もまたそうだった。また、生産されたものを運ぶことも困難であった。ストックもフローも必要な時、必要なだけというシステムであった。消費者は生産者でもあり、生産者は消費者であった。

·  第二の波は産業社会と呼ばれるものである。
産業革命以後のことだ。機械が登場した。
そして様々な産業や組織での規格化、専門化、同時化、集中化、極大化、中央集権化が行われた。
消費者と生産者ははっきりと分かれ、大量消費社会へと変化した。

·  そしてこの本の書名でもある第三の波は情報化社会と呼ばれるものであり、まさにいま私たちが生きている社会であるといえる。
そしていまは第三の波から第四の波との狭間であるといえる。
「波」が生じる時はかならずお互いにぶつかりあう。
それぞれの利害がぶつかりあっているともいえるかもしれない。

·  第三の波は、第二の波までに構築された社会構造を変えた。様々な産業や組織での非マス化、多様化、分散化、分権化、生産者=消費者の復活が起こった。
その中でとても個人的に興味をひかれたのは本文第
26章にある「コミュニケーション革命」という言葉だ。
「コミュニケーションと人間の性格は、複雑だが切っても切れない関係で結びついている。
コミュニケーション手段がすっかり変わったのに人間だけは変化しない、ということはありえない。メディアの革命は、人間心理を革命せずにはおかない。」と本文でトフラーは述べている。
コミュニケーション手段は確かに多様に(非マス的に)変化した。
携帯電話は
20世紀末に急速に浸透し時間と場所を問わない連絡手段となったし、電子メールは封筒に切手を貼ってポストに放り込む煩わしさを取り除いた。
トフラーはコミュニケーション手段が相互的になると予測している。

·  しかしながら、コミュニケーション手段の変化による人間心理の革命はまだ私たちも第三の波をかぶっている最中ゆえにどのようになっていくかは分からない。
そして日々、変化している。
「第四の波」はもう私たちのそばに現れてきているのだと思う。
いいか悪いかは別にして、私たちと社会は必ず変化していくのだ。