
マスタードラゴンに乗って乗り込む大神殿。
中には多数の地蔵が並んでいるよう見える。
主人公:「…水子地蔵…?」
双子(兄):「違います。父さん! コレ人間です!」
いにしえ。ガンプラ発売日のプラモ屋さんでの争奪戦のごとく。
群がる人々をかきのけ…ることもできないまま、うろうろと回り道して、垣間見る。
女主人がひとり。その後ろに陳列されているあれはっ!
おお。あれはまさしく、伝説の一品! 角突きの赤い奴!…じゃなくて、
フローラじゃん!!!!!
主人公:「ババア! この麗しの石像寄越せ!」
偽マーサ:「あたしゃ、おまえの母だよ! なんだい、その口の利き方は!」
(」゜ロ゜)」 ナント
主人公:「母さんが悪の根源だったのか…」<素直
偽マーサ:「まったく、誰に似たんだろうねぇ。あたしに似たら、頭脳明晰、眉目秀麗、クールでスタイリッシュな魔界のプリンスなはずなのに…。やっぱりパパスなんて蛮人が育てたから…」
主人公:「そうそう。パパス父さんは本当にがさつだった…」
偽マーサ:「え? 認めるリアクション…?」
主人公:「ああ。(頷) 食事とくれば、狩ったばかりのモンスターを、焼いて食う、生で食う、の二者択一。調味料なんて塩一本やりでのかぶりつき…。
幼少で抵抗力もない俺は、何度死のふちを彷徨ったことか…」
偽マーサ:「…そ、そうなの…?」
主人公:「半魚人の肉は不老不死になるとか言っては、とれとれビッチビッチ活け作りの踊り食い…。
たまて貝の刺身にあたって、赤痢になったこともあったっけ…。懐かしいなぁ…」
偽マーサ:「……。」
主人公:「ああ。そういえば、こんなこともあった。…って、聞きたい?」
偽マーサ:「う?」
主人公:「聞きたければ、グランバニア王様万歳教に入信なさい」>「はい」「いいえ」
マーサ:「…あ、あれっ? そのふりって、それはひょっとかしなくてもこちらがするべき…」
主人公:「答えは簡潔に! 「はい」か「いいえ」かっ! どっちっ?」
偽マーサ:「いや、聞きたいけどさ。でも、ええとっ!」
主人公:「初めと終わりにサーをつけんか!!!!!! 串焼きにして食うぞ、バカヤロウめッ!!!!!」
偽マーサ:「ひ…っ、さ、サー、イエッサー!!!!!!!!!!!!!!<(T◇T)」
戦闘開始!
パパスの妻にして、主人公の母マーサに化けていたラマダ。
意外とあっさり倒れてくれる。いいやつだ。
しばらくフローラの石像のまわりで、なすすべもなくぐるぐる回ってバターになっちゃう主人公一行。
フローラには、石化のうえ呪いまでかかっているそうだ。可哀想に…フローラっ…!
双子(妹):「お父さん! ここに隠し階段ー!」
主人公:「フローラっ…! フローラ…!」
双子(妹):「お父さんってば!」
双子(兄):「…さがっていなさい、妹よ…(ずい)」
双子(妹):「?」
双子(兄):「父さん。母さんを元に戻すには、この奥のイブールを倒せばいいそうですよ」
主人公:「は! そうか! よし、すぐ行くぞ! 倒すぞ! 我に続け、勇敢なる仲間たちよ!!!!」
双子(妹):「……お兄ちゃん…?」
双子(兄):「プサンさんから、ものの言い方を教わったんだ…(ふ)」
双子(兄)は、精神的にレベルがあがった!
大神官イブール:「よくぞやってき…
o(">_<)っ★ バキッ!
大神官イブール:「やってきた…な
〜〜Ю)°o°)/ボコッ!!
大神官イブール:「勇者ど…
( °▽°)=◯)`ν°)・;'.、
大神官イブール:「前口上を聞かないのは反則なんだぞッッ!!!!(泣)」
主人公:「やかましいっ!
身の程もわきまえず、フローラの美しき石像を、日々やにさがって眺め愛でていた貴様の所業! 万死に値す!!!!!!」
…………………………………………………………………L(T□T)」 (号泣)
戦闘終了。
主人公:「よーし。悪は滅びた。フローラ迎えに行くぞ♪」
ゲマ:「…あの…。ワタシの出番は…」
双子(妹):「お母さんだ、お母さんだ♪ わあい♪」
ゲマ:「…イブールにとどめさすのは、ワタシの役目…」
ゲマがいたようだが、もはやフローラ以外目に入りません♪
双子(兄):「あの人が、この状況で他に目がいくはずないだろ。諦めなよ(肩ポン)」
ゲマ:「……ぉ、おのれぇ……、せっかくの見せ場を……ッ!…」
主人公のあずかり知らぬ眼中外で、ゲマの恨みを買いとってあげる双子(兄)は、さすがの勇者ですね。
奴隷時代に見覚えのある洞窟を通って、フローラのもとへ向かう主人公たちの耳には、そして本物の母(双子にとっては祖母)マーサからのあたたかいメッセージが届く。
マーサ:「魔界に来てはなりません。伝説の勇者といえども 、魔界にいる大魔王には、とてもかなわないでしょう」
主人公:「…言われてるぞ、息子」
双子(兄):「……。」
マーサ:「お前には、すでに、 かわいい奥さんと子供たちが いると聞きました」
主人公:「そりゃもう、可愛くて美人で気立ても勇ましい最高の嫁ですよ♪ どこに出しても恥ずかしくないっ♪」
双子(兄):「…それより僕は、どこでそんな情報つかんだかをお祖母ちゃんに聞きたいです…」
マーサ:「……それはさておき」
双子(妹):「おばあちゃんっ?」
マーサ:「この母のことなど忘れて、家族なかよく暮らすのです。母は、この命にかえても、ミルドラースをそちらの世界にいかせません。さあ、もうお行きなさい。すぐそこに、可愛い人が待っているはず…」
主人公:「……」
双子(妹):「…お父さん? 何を考えているの…?」
主人公:「…いや。家族仲良く、のんびりと…ってのも良いよなぁ…、と」
双子(妹):「お父さんっ?」
双子(兄):「はいはい、下がってなさい、妹よ(ずい)
魔王退治を母親に任せるなんて、マザコンっぽくて女性に嫌われますよ、父上」
主人公:「…え」
双子(兄):「僕らの母さんだってマザコン男は好きじゃないんでしょ? それより、魔王を超えた強い男って、かなりカッチョイイと思いません?」
主人公:「それは…」
双子(兄):「母さんに、また惚れ直されちゃいますね、お父さん♪」
主人公:「そ、そうかなぁ(照れ照れ) よっしゃ♪ 首を洗って待ってやがれ、魔王〜♪」
双子(兄):「…どうだ、妹。ざっとこんなもんだ」
双子(妹):「さすが勇者よ、お兄ちゃんっ!」
階段を上がれば、そこで生身のフローラと再会だ!
フローラ:「ここは…どこかしら…。…私ったら、今まで何を…?」
フローラだっ!
生身のフローラだっ!!!!!!
ヽ(^◇^*)/ わーい♪
フローラ:「あなた…、助けてくれてどうもありがとう。それから、子供たち…。今まで放っておいて、本当にごめんね…」
双子:「うわあぁぁぁん! おかあさーんっっっっっ!!!!!!!!!!(泣)」<すがりつきっ!
そうだよな。
揃ってマヌケに仲良く石になっていた主人公と違い、子供たちは母も父もいない時間を、魔物の脅威と戦いながら、歯を食いしばって一秒ごと生きてきたんだ。
今くらいは子供たちにフローラを独占させてやろう。うむうむ。
感慨にふける主人公。
双子(妹):「あのねっ。お父さん酷いんだよっ! 私が高いとこ嫌いなのに、ご用事もう終わったのに、『宝箱の取り忘れチェック』とか言って、何度も、高くて怖い塔に登らせるのーっ!」
(_□_:)!!
主人公:「おいおい、いきなりそんなこと言いつけるなよ。困った子だなあ、はっはっはっ♪(汗)」
フローラ:「……。」<この人も高いとこ苦手
双子(兄):「それだけじゃないですよ! 皆、イヤだって言ったのに、隙あらばパルプンテ唱えまくるんですっ! 何度、馬車から仲間が飛び出すはめになったことか…(泣)
それでもゲラゲラ笑って、またパルプンテするんですよ、この人はっ!」
主人公:「だって面白いじゃないか、パルプンテ…。特に、全員がメダパニかかったときとか」
双子(兄):「面白がってるのは、父さんだけでしょ!」
主人公:「モンスターに特攻かけようとして、つまづき転び。あげく起き上がるのに失敗してターンを消費する、起き上がりこぼしのようなゲレゲレ(キラーパンサー)。…面白かったじゃないか…」
双子(兄):「妹がパニックに陥って、『えいっ えいっ』とかモンスターに石を投げつけてたってのに。父さんは、酔っ払いオヤジそのものになってモンスターに絡んでましたっけねェ」
主人公:「おまえなんか、モンスターに抱きつきにいったじゃないかっ!」
双子(兄):「誰のせいですっ!」
主人公:「…“呪文を憎んで、人を憎まず”」
双子(兄):「母さん!どうしてこんな父さんと結婚したんだよ〜っ!!!!! うわああぁんっ!!!!!!(泣)」
双子(妹):「うわあああぁぁぁぁんっ!!!!!!(泣)」
フローラ:「………あなた」
主人公:「…はい…」
フローラ:「“じゅもんつかうな”」
主人公:「……。
…あっ! そ、そうだフローラっ。こんなことがあったんだよっ。
カボチ村って覚えてるかい? ゲレゲレに悪態ついた、感じの悪い田舎村!
いや、感じ悪いってのは昔の話。
今はすっかり明るくなって、俺を詐欺扱いした過去すら悔いてくれたんで、問題ないんだよ。それがさ。
子供たちつれて立ち寄ってみたら、夜中だっていうのに、誰か立ってるんだよ。
見覚えのある人が! 誰だと思う?」
双子(妹):「お父さん、お話そらしてる〜!!!!」
主人公:「あっちいってなさい、娘。
それがさ。あの懐かしの宅配業者さんだったんだよ!
ルドマンさんに頼まれて、れいによって宝箱…今度はなんと、きせきの鎧を持ってきてたんだ!
ポートセルミの港で俺たちをつかまえるつもりが、迷子になったのを運の尽き!
なんと十年間も俺たちを待ってたんだってサ! 生身で十年だぜ! 信じられるかい?
「やっと家に帰れる〜」なんて喜んですっとんでったけど。
いやはや、宅配業って厳しいものなんだね。そう思わないか、愛しい君」
フローラ:「…あなた…♪(にっこり)」
主人公:「はい♪」
フローラ:「………“じゅもんつかうな”( ̄  ̄メ) 」
主人公:「…………………はい(泣)」
さあさ。皆さん、涙はぬぐって。
それでは、我が家に帰りましょう♪