◇毎日新聞論説委員 与良正男
注目された民主党、自民党のダブル党首選が終わりました。民主党は野田佳彦総理大臣(首相)が代表に再選され、自民党では安倍晋三元首相が総裁に決まったことは、みなさんもご存じでしょう。
とりわけ、自民党の総裁選は最後まで大混戦でした。1回目の投票では石破茂さんが自民党員と党友投票による地方票を半数以上、獲得して1位。しかし、国会議員票との合計では過半数を取れずに、国会議員票だけで争われる決戦投票に持ち込まれた結果、安倍さんがからくも勝利しました。
党員投票では石破さんが大きく上回ったという重みは安倍さんも分かっているでしょう。有権者を対象にした新聞社やテレビの世論調査でも、石破さんを支持する人が多かったのも確かです。安倍さんを選んだ自民党の国会議員の思いと、世論とのギャップをどう埋めていくか。まず、安倍さんにはそれが大きな課題になると思います。
安倍さんはかつて小泉純一郎さんの後を受けて自民党総裁、そして首相になりましたが、体調不良で首相を辞めました。それは多くの国民の記憶にまだ残っています。もう体調は回復したということですが、不安を持っている国民も少なくないと思います。「体力も万全」であることをアピールしていくのも今後の課題となるでしょう。
自民党総裁を一度経験した人が、もう一度、総裁になるのは今度の安倍さんが初めてだそうです。首相を辞めた人がもう一度、首相になる例も戦後、ほとんどありません。
言うまでもありませんが、自民党はまだ野党です。安倍さんが再び首相になるためには、次の衆院選で自民党が勝つことが必要です。その意味では、今度のダブル党首選は準決勝です。首相は野田さんか、安倍さんか、あるいは別の党の人か。もちろん決勝戦は衆院選ということになります。
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政治部デスクなどを経て2004年から論説委員。早稲田大学大学院客員教授も務め、TBS「みのもんたの朝ズバッ!」、大阪・毎日放送「ちちんぷいぷい」にも出演。1957年生まれ。