ドイツ政府は、宗教上の理由から男児の性器の包皮を切り取る「割礼」を合法化する方針を決めた。割礼が傷害罪にあたるという判決を受け、ユダヤ教徒やイスラム教徒から激しい反発が起きる一方、宗教の自由と子どもの権利をめぐる論争が起きていた。
ドイツ法務省が先月25日に各州などに示した方針によると、両親の同意があり、医学的な規則にのっとっている限りは違法とせず、刑罰を科さないとした。ユダヤ教徒に配慮し、医師でなくても同様の技術を持っている場合は割礼の実施を認めた。近く連邦議会に法案を提出する。
割礼は世界各地で長年行われている風習だが、ドイツ国内で割礼を受けた男児が大量出血した事件で、ケルン地裁が5月に傷害と判断。ユダヤ教徒などがナチスドイツのユダヤ人迫害の歴史にも触れつつ反発した。一方で、子どもの権利を主張する団体などは、子どもが肉体的に傷つけられない権利や子どもの自己決定権を主張していた。
政府報道官は「ユダヤ教徒やイスラム教徒の不安を終わらせたい」と話した。ドイツのユダヤ人中央評議会は決定を歓迎している。(ベルリン=松井健)