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二村さんは現在、ナムコさんでプログラマーとしてご活躍されているとのことですが、プログラム以外のお仕事をご担当されたことなどはあるのでしょうか?また、ゲーム業界に入ろうと思ったきっかけは、どんなことだったのでしょうか? |
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二村さんにとってゲームのお仕事、いやナムコさんへの入社は、まさに「天職」であり「運命」だったのかもしれませんね!それでは次に、前回ご登場いただいたエコールソフトウェアの真鍋さんと出会ったきっかけを教えていただけますか? |
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二村氏:
尊敬するゲーム開発者だったので、ファンとして裏東京ゲームショウに駆け付けたことがきっかけデス。尊敬のきっかけは少々長くなるのデスがせっかくだからお話しすべきでしょう。
正なのか負なのかも判らぬほど強烈なエネルギーを放つ怪作『デスクリムゾン』のことに関心を持たない業界人はおりませんが、その開発者に関心を持つ業界人も少なくないと思います。自分もその一人でした。『デスクリムゾン』に対して当時の世論は完全なる酷評でしたが、少なくとも開発者の本気というものだけは痛いほどに伝わって来たことを覚えています。同時に、もう次を作って出すこともないだろうとも感じました。大いに傷ついただろうと想像しました。
自分自身もその頃なかなか評価が伴わない状況でしたが、そんなとき喝を入れてくれたのが心の中のコンバット越前(『デスクリムゾン』主人公)でした。「とにかく作ってみようぜぇ。」そしてまさかの『デスクリムゾン2』開発発表。心底嬉しく感じると同時に、眞鍋さんの持つ強さというものに惹かれるようになったわけデス。裏東京ゲームショウ以来、エコール主催のイベントには常にひっそりと潜入させて頂いております。
人を驚かせることが大好きな方でお話もとても面白いのデスが、以前一緒にお食事した際に、「最高のゲームを作った人と最低のゲームを作った人が一緒に食事しているなんて面白いデスね」と笑ってお話されたときには私は顔では笑いながらも恐縮することしきりでした。
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…「デス」がカタカナなのはご愛嬌ですね?(笑)細かいところに愛情をひしと感じました…。真鍋氏との出会いは、二村さんの人生にとってきっとかけがえのないものなのだと思います。ではこれまでの人生上、自分に多大なる影響を与えた出来事などがほかにありましたらお聞かせいただけますか? |
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二村氏:
先に体の弱い子供だったとお話しましたが、RPGに出会ってからというもの体を鍛えて強くなることに面白みを見出しましてこつこつ経験値を蓄えた結果、ベンチプレス150kgとかスクワット250kgなどどいう、むしろ頑強な部類に属するようになってしまいました。こうなると多少の勘違いは入ってしまうもので、向上心を持たない者を軽蔑するようになったり、ゲームというものを選ばれた人間の趣味として考えてしまうという良からぬ傾向を徐々に持つ様になってしまっておりました。この後当初の志を取り戻すきっかけとなったある夏の出来事が、ある意味私の人生の転機ではないかと思います。
人生経験のひとつとして、少しの間大勢のホームレスが暮らす某所に自分も成りきって潜入して暮らしてみたことがあります。そこでの人々の暮らしは壮絶なものでしたが、そこに馴染むのはとてもたやすいことで、数日後には不衛生な物を食べ、人目をまったく気にせずどこにでも寝転がるようになり、そして普通に生活する人々が電車に乗り通勤する姿がまぶしくてまともに見られないようになりました。落ちていくことのたやすさ、そこから這い出ることの難しさを垣間見ました。そんな中必死に生きる人たちとの関わりの中で、人間の持つ弱さというものをまず認めようと考えるようになったのです。そして食べることすら十分でないこの世界で娯楽を、楽しみを求め工夫する人々の姿に出会い、殴られたような衝撃を覚えたのです。自分が作るゲームというものは、すべての人のためにあるべきではなかったかと。
未だ道は半ばですが、頑張っております。
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…普通ではあまりありえない経験ですよね…。その経験が、二村さんのゲーム制作の根底にも流れていることと思います。それでは二村さんが普段から念頭に置いていること、また今後ゲーム制作の現場はどうあるべきかなど、お考えをお聞かせいただけますか? |
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二村氏:
プライベートでは子育てですがそれは置いておいて…。プログラマの地位向上ですね。重要度はまずます上がっているにも関わらず、注目度がほとんど無い今の状況は将来を考えると非常にまずいと思います。このコーナーでも現役プログラマの登場は少ないように思います。ハードウェアの性能の議論は絶えませんが、ハード性能が十分高い現在では、プログラマの能力差の方が重要な問題です。職業としてのプログラマが魅力あるものであり続け、若い新しい才能がどんどん入ってくる状況を作らないと、国家の支援まである他国に遅れを取るようになっていくでしょう。そうなると日本の産業としてのゲーム業界の縮小は避けられません。
数少ないバイブルであり最後の砦であった「マイコンBASICマガジン」がついに休刊してしまうなど、状況は良くありません。
ゲームをプレイしたことが豊かな経験となり、人生をより良い物にする。そういうゲーム作りを心がけています。
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なるほど。まだまだお話をお伺いしたいのですが、最後の質問になってしまいました。二村さんは今後のゲーム業界にはどんな遊びが生まれてくると思いますか?未来のゲーム業界についての展望、希望などがございましたらぜひお聞かせ下さい。 |
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二村氏:
ネットゲーム…と言いたい所ですが、人との関わりによって生まれる面白さは、同時にそれ以上にもならないのではと思っています。テレビゲームが誕生して間も無い頃、当時我々は画面の向こうに人智を超えた存在を確かに感じ、その神秘と触れ合っていました。その頃のような鮮烈な希望に満ちた世界を創造できるならば、そこにオンラインで人々を招き入れる必然性が生まれるかも知れません。
将来においてはまずゲームよりも世の中が楽しいことで溢れていて欲しいと願います。宇宙探査とか。なんとか自分が生きているうちに恒星間飛行が実現するのでは、と期待しておりましたがまさか21世紀になってこんなに宇宙が遠のいて戦争ばっかりやっているとは思いませんでした。
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なるほど、深いですね。明るいゲーム業界の、そして私たちの未来のために…これからも素晴らしいゲームを期待しております!それでは、次のお友達を紹介していただけますでしょうか? |
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二村氏:
株式会社ノイズの、見城こうじさんをお願いします。「マイコンBASICマガジン」で人気コーナーを担当されており、古くからのゲームファンにはお馴染みの方です。ゲームの本質を真剣に考える姿勢は多くのゲーマーに影響を与え、かく言う私もその一人です。
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見城さんは、確か以前ナムコさんにご在籍されていた時期がありましたよね。オールドゲーマーにとってももちろん、皆さん必見の内容になりそうな予感です!今回はお忙しいところ、貴重なお話をどうもありがとうございました! |