2012年09月25日 (火)

【コラム】日本ゲーム業界の将来に関する渋々ながらの懐疑論

TGS 2012を訪れたGamasutra記者が、日本のゲーム業界の展望をコラムにまとめています。

私にとって、日本の状況を把握するというのは至難の業だ。世界の反対側にいるからというのもあるし、日本のゲーム業界と頻繁に接しているわけではないからというのもある。私が日本語が全くできないことも、TGSでの私の体験をエキサイティングにしてくれた。

正直な話、私は日本のゲーム業界の現状を直接体験したことが殆どない。時折、元カプコンの稲船敬二氏が「創造性が破綻」した日本の現状を批判するのを目にする程度。だが、そうした発言の抜粋も、問題の根本を表していはないだろう。

urasawa.jpg鵜之澤伸氏

長年バンダイナムコのトップを務め、コンピュータ・エンタテインメント協会、通称CESAの会長でもある鵜之澤伸氏は、TGSを訪れたジャーナリストたちに、特別なことは何もないと説得して回っていた。アメリカ同様、日本の会社も多くがオンラインでのセールスをミックスさせることができずにいて、ここアメリカと同じく、停滞するパッケージ・ソフトの売り上げ本数も、オンラインの比重が増しつつあるゲーム業界の現状を正確に示してはいないというのである。

彼は、パブリッシャーにデジタル・セールスの数字をよりオープンにするよう求めており、『ファイヤーエンブレム』や新バージョンの『ファンタシースターオンライン2』のような、デジタル・セールスの比重が大きいゲームで利益を上げている「伝統的な」日本のゲーム・パブリッシャーを例に挙げている。日本のゲーム業界について、より楽観的になるべきだというメッセージである。パブリッシャーは数々の浮き沈みを体験してきたが、日本の業界全体としては安定していると彼は語る。事態は変化、改善しつつあるというわけだ。

彼の発言は興味深いものだ。我々は何故、苦境を強いられる日本の現状を、まるで日本固有の現象のように語るのか、と思わされる。創造性の破綻や甘い経営姿勢の例などは、アメリカにも枚挙に暇がない。レイオフやスタジオの閉鎖、株価の下落は、欧米にもたくさんある。結局はお互い様なのだ。

大丈夫・・・だよね?

私は、日本ゲーム業界の内情に詳しい雑誌Game Developerの編集主任Brandon Sheffield氏に話を聞いた。彼は過去7年間日本のゲーム会社と様々な仕事をした経験を持っており、その風貌はまるで渋谷のクラブに入り浸るお洒落な外人のようだ。ともかく、彼は日本に精通した人物である。

私は彼に持論をぶつけてみた。欧米も日本とさほど状況は変わらないだろう?「日本の問題」を区別して語る必要はないし、状況は改善されつつあるのだろう?と。

Sheffield氏は私の肩に手を置き、「いや、日本のゲーム業界は土台が腐っている。企業文化を大きく変えなければ、悪化する一方だろう」と語ると、宙へと消えていった。そこで目が覚めた私は、Sheffield氏が今日本にはいないことを思い出したのである。だが、彼は正しかった。

理由は明確、日本の文化だ。アイデアマンの閃きや独創的アイデアではなく、サラリーマンの機械のような努力に基いた文化。上司を怒らせないよう、上司よりも長く会社に居続けなければならないという文化。安定した収入を確保することが全てであり、結局のところ、革新性よりも後追いが重要なのだ。

inafune2.jpg稲船敬二氏

となると心配なのは、保守的な大手パブリッシャーの内部が変わらないことではない。問題の根っこが文化にあるとするなら、モバイル・ゲームのように成長著しい日本の新興ゲーム・ビジネスにも、そうした潜在的問題が影響を及ぼす可能性があるという点だ。東京のオフィスで夜に行われたインタビュー取材を通して、私はこれを直接目にすることとなった。広報の人間を夜遅くまで付き合わせてしまったことを心配する私に、彼は笑いながら「問題ない」と語った。彼の上司はちょうど会議中で、どちらにせよ上司よりも先に帰宅することなどできないというのである。

「アメリカは個人が重要だが、日本は会社なんだ」稲船氏は今週、TGSで私にこう語ってくれた。それに気付いているにも関わらず、自らの独立系会社が大手パブリッシャーコーエー・テクモと提携しているというのは皮肉である。『Ninja Gaiden Z』が仮に実現するとすればではあるが。創造的ビジョンは自分自身のものであると語る彼の言葉を私は信じるが、同時に、その「会社」がゲーム開発にどれほど口を出してくるのか、是非眺めてみたいものである。

私は日本製ゲームで育った人間だ。Gamasutraスタッフの多くがそうだし、読者の多くも同じだろう。私は日本のゲーム業界の現状が心配だし、今でも多くのファンを抱える「日本らしさ」を活かすのではなく、欧米製ヒット作を真似して退屈なゲームを作り続ける日本のゲーム会社のことが心配なのだ。

wsja.jpgTGSの模様を伝えるウォール・ストリート・ジャーナルの記事

この週末、私はウォール・ストリート・ジャーナル・アジアに目を通したが、TGSに関する記事はほぼ全てモバイル/ソーシャル・ゲームの大手GreeとDeNAの2社に割かれていた。彼らは大きな成功を収めている。それも、見た目も感覚も正に日本製というゲームで、国内だけでなく世界的に成功を収めているのだ。元気付けられる話である。

七音社、Platinum、From Software、そしてGrasshopper Manufactureといったより「伝統的な」ゲーム会社も、日本らしさを謳歌している。彼らは自分たちが作りたいと思うゲームを作り、世界的なオーディエンスを獲得している。『Call of Duty』級の商業的成功を収めているかというと答えはノーだが、彼らは自らの創造的ビジョンに忠実で、それを人々は楽しんでいる。

だが、日本のゲーム業界は全体的に健全なのだろうか?セガ、カプコン、コナミといった会社の未来は?GreeやDeNAがどれだけ成功を収めようとも、業界で大きな位置を占めるのは、昔ながらの保守的な大手パブリッシャーであり続けるのである。CESAがグラフを見せ、伝統的なパブリッシャーがデジタルでの売り上げを伸ばしていると力説し、明るい面を見るよう懇願することはできる。日本が困難を乗り切ってくれると信じたいのは山々なのだが、一歩下がって冷静に状況を分析すれば、私も批判に同意せざるを得ないのだ。ゆっくりと、しかし確実に日本のゲーム業界の首を絞めているのは日本の文化であり、本当の未来は見えてこない。

[ソース: Gamasutra]

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