ソウル市内のK大学に交換留学生としてやって来たベトナム人のAさん(23)は最近、夏休みを利用して京畿道にある携帯電話の組立工場でアルバイトをした。しかし、給料日が近づくと、社長は「工場が大変なことになった。少しだけ待ってほしい」と、アルバイト代の支払いを先送りした。そして、ついには社長の電話番号が変わってしまい、連絡さえ取れなくなってしまった。結局Aさんは約1カ月のアルバイト代150万ウォン(約10万5000円)を受け取ることができなかった。
ソウル市内のS大学に通っている中国人留学生のBさんも、学校周辺の飲み屋で毎日8時間バイトしたが、2カ月分に相当するアルバイト代(200万ウォン=約14万ウォン)を受け取ることができなかった。留学生会が店を訪れて支払いを求めたものの、社長は「経営状態が厳しい」という言葉を繰り返すだけだった。Bさんは「労働庁などに訴えようとも思ったが、あちこち回らなければならず、不利益を被る可能性があったためやめた」と、結局アルバイト代を諦めた。
このように、アルバイト代を支払ってもらえない外国人留学生が増えている。被害に遭った学生たちのほとんどは訴えようとしないため、統計としては残っていないものの、留学生たちの間では「バイトをした留学生の10人に1人は支払ってもらえなかった経験がある」との話がある。中には、セクハラが発生するケースもあるという。国立国際教育院外国人留学生相談センターや外国人留学生会には、賃金を支払ってもらえないなどの訴えが日に日に増えている。
しかし、被害者たちが公的に問題を訴えるケースはまれだ。これは、留学生のバイトのほとんどが違法であるためだ。2009年に法務部は、事前に申告する場合に限り、学部生には週に20時間、大学院生には週に30時間のバイトを許可した。しかし、事業者登録証、推薦書などの書類を提出しなければならない上、週に20-30時間以上働くケースが多く、ほとんどの留学生が申告しないのが実情だ。建国大学に通う中国人留学生のハヤンさん(24)は「週に20-30時間では、時給5000ウォン(約350円)の場合、月にわずか40万-60万ウォン(約2万8000-4万2000円)にしかならない。最も安い下宿でも月に30万ウォン(約2万1000円)以上だが、これではやっていけない。そのため不法のアルバイトをするほかない」と実情を語った。不法のアルバイトは、ビザの取り消し理由となる。
ソウル産業通商振興院の関係者は「外国人留学生はバイト探しの競争が厳しいため、韓国人学生よりも500-1000ウォン(約35-70円)安い時給でも働くケースが多く、不当な目に遭ってからも、不法就労が発覚するのを恐れ、話せないケースが多い」と話した。これについて、法務部の関係者は「外国人留学生のアルバイトに制限を設けているのは、ビザの目的自体が学業だからだ。無制限に許可してしまえば、副業であるアルバイトが本業になってしまいかねない」と説明した。