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2012年10月1日(月)付

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学校の部活動―地域ぐるみで支えては

休日の部活動は、企業派遣のコーチに指導を任せる。東京の杉並区立和田中学校が、そんな試みを始めた。少子化と顧問のなり手不足の中、部活をどう守り続けるか。多くの学校に共通す[記事全文]

温暖化対策―税制の上手な活用を

二酸化炭素(CO2)を出す石油や天然ガスなどの化石燃料に、きょうから環境税(地球温暖化対策税)がかかる。日本が原発を減らしていくうえで、化石燃料を使う火力発電に当面は頼[記事全文]

学校の部活動―地域ぐるみで支えては

 休日の部活動は、企業派遣のコーチに指導を任せる。東京の杉並区立和田中学校が、そんな試みを始めた。

 少子化と顧問のなり手不足の中、部活をどう守り続けるか。多くの学校に共通する悩みだ。

 全国の中学校はこの20年で生徒が3割減り、その間に運動部は1割ほどがなくなった。

 教員も人数を削られ、高齢化も進んだ。そのうえ授業の時間増などで忙しくなり、休日出勤の多い顧問は負担が重い。

 和田中は、スポーツ教室を営む企業のある都会ならではの答えを出した。どこでもできるやり方ではない。それぞれの地域に合った手立てを考えたい。

 少子化が止まらぬ限り、各校単独の努力にはいずれ限界が来る。地域のスポーツや文化クラブと連携するのが一つの手だ。

 新潟県燕市の分水(ぶんすい)中はNPO「クラブスポーツバイキングぶんすい」と手を結んでいる。9年前にできた地域のクラブだ。幼児からお年寄りまで830人が30種目を楽しんでいる。

 分水中は教員が減って顧問が足りなくなっていた。そこで、体操部はクラブが運営を引き受けた。学校ではなくクラブの指導者が教える。大会には分水中として参加できる。

 ほかに四つの部も、部ごとクラブに加入して、学校とクラブ一体で活動している。

 保険料込みで月に千円の会費がかかるが、地元の少年スポーツ指導者や教員OBらの専門家に習える。小中高と同じ指導者につける。部活にない種目も楽しめる。

 それだけではない。「部を引退した中3が小学生を教えたり、地域の大人が親代わりになって叱ったり。世代間のつきあいが生まれている」。市体育協会の本多政則さんは話す。

 「ぶんすい」のような総合型地域スポーツクラブは、生涯スポーツの拠点として7割方の市町村にある。資金などの課題が指摘されているが、うまく軌道に乗せれば、部活を地域ぐるみで支えるツールにもなる。

 部活を「学校の活動」から、「地域の活動」に広げていく。それは、子どもたちの世界を広げることにもつながる。

 学校は同じ顔ぶれで一日の大半を過ごす。固定化した人間関係はいじめを生みやすい。相次ぐ悲しい事件が教えてくれる。

 つらいとき、学校とは別のもう一つの世界を持っていれば、心の支えになる。相談できる友だちや大人が増える。

 10代から地域の一員として活動することは、社会を学ぶ良い機会にもなるはずだ。

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温暖化対策―税制の上手な活用を

 二酸化炭素(CO2)を出す石油や天然ガスなどの化石燃料に、きょうから環境税(地球温暖化対策税)がかかる。

 日本が原発を減らしていくうえで、化石燃料を使う火力発電に当面は頼らざるをえない。

 脱原発を進めながら、CO2の排出をどう抑えていくか。税制が果たすべき役割はこれまで以上に大きい。上手に活用していくべきだ。

 環境税は、化石燃料全般が対象の石油石炭税に上乗せする形で新設された。

 燃料の種類にかかわらず、使う際に出るCO2の1トンあたりで税額を決めた。CO2排出量が多い燃料の税負担は重く、少ない燃料では軽くなる。公平で合理的な仕組みだ。

 これによって、省エネや発電の効率化を促し、税収は自然エネルギーの普及などに使う。

 エネルギー課税には、揮発油(ガソリン)税、軽油引取税などさまざまな税があるが、CO2排出量に照らすと税負担の水準はバラバラだ。環境税を突破口に改めていきたい。

 一方、温暖化と関係の深い自動車への課税でも、本格的な見直しが始まる。こちらは環境税とは逆に、税の軽減に向けた議論となる。

 焦点は、車の購入時に価格の3〜5%を支払う自動車取得税と、重さに応じて車検などの際に納める自動車重量税だ。

 購入時には別に消費税が、保有には自動車税がかかる。自動車業界と経済産業省は「二重課税だ」と批判し、取得税と重量税の廃止を主張する。

 だが、単純な税の減免では温暖化防止に逆行しかねない。

 取得税と重量税では、一定の排ガス基準や燃費性能を満たした車の税負担を軽くする「エコカー減税」が実施されてきた。それがメーカーの技術革新を促し、エコカーを普及させる原動力の一つとなった。

 両税とも、国と地方の貴重な財源だ。課税を続け、エコカー減税の考え方でCO2の排出抑制を強化していくべきだ。

 1年前の税制改正論議では、関係省庁が自治体や業界をバックに攻防を繰り広げ、重量税の一部減税とエコカー減税の手直し、補正予算によるエコカー補助金の復活でお茶を濁した。

 こうした目先の損得勘定では、議論が深まらない。

 エネルギー課税も、自動車課税も、これまで個別の税がバラバラに積み上げられてきた。「温暖化防止に税制をどういかすか」という大きな視点から、両分野を一体でとらえ、制度を見直していくことが必要だ。

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