(cache) 校長室の春夏秋冬 | 神奈川県立湘南高等学校

学校概要

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学力向上進学重点校として

湘南365日

部活動の成果

公開行事・説明会

校長室の春夏秋冬

2012年8月

自彊不息(じきょうふそく)


 湘南高校5回生に和田忠夫さんという方がいらっしゃいます。残念ながら、今から67年前の昭和20年3月9日に、フィリピンのミンダナオ島で戦死されました。
 和田忠夫さんは、奥様の光子さんとご結婚される際に、初代校長赤木愛太郎先生より、お祝いとして扁額を戴きました。その扁額は和田家の家宝としてながらくご自宅に飾っておられましたが、このたび、その扁額が忠夫さんと光子さんの長女である和田静子さんとそのお嬢様(忠夫さんと光子さんにとってはお孫さん)より、湘南高校に寄贈されました。

 自彊不息(じきょうふそく)と書かれた赤木先生直筆の意味は「自ら勤めて努力すること」(『易経』より)で、現在、学校で私達が口にする“Always do what you are afraid to do.”の意味と通じるところがあると私は思っています。
 この貴重な扁額は傷みの部分を修復して、校長室にありました赤木先生の肖像画と併せて正面玄関のギャラリーに展示しております。生徒をはじめ、多くの皆さんに見て戴き、「文武両道」による日本一の学校づくりを目指した赤木先生の功績を思い出していただければ幸いです。
 なお、和田静子さんのお嬢様である井上文緒さん(長女)、麻生美佐緖さん(次女)は、お二人とも本校の卒業生(59回生と61回生)です。

 7月13日(金)は鎌倉芸術館で「湘南高等学校合唱コンクール」が行われました。このコンクールはクラスごとに、課題曲と自由曲を歌い、その優劣を競うものです。当日は、文化部連合委員会委員長の伊澤茜音さんはじめ、文連のメンバーが中心となって運営を取りしきりました。
 また、本校のかつての音楽講師や卒業生に審査員をお願いしました。田中清隆先生、櫻井加代子先生、川上薫先生、柿沼唯先生にはこの場をお借りして改めてお礼申し上げます。

 平成24年度の総合順位と自由曲は次のようになりました。新たな Legend の誕生です。
  ・第1位 3年5組 聞こえる
  ・第2位 3年6組 あの空へ -青のジャンプ-
  ・第3位 3年9組 混声合唱曲集「まだ見ぬあなたへ」問え、そして歩め
  ・第4位 3年4組 混声合唱曲集「いのちの木を植える」より 木
  ・第5位 3年7組 あの空へ -青のジャンプ-
  ・第6位 3年8組 僕が守る
  ・努力賞 1年5組 虹

 ちょうど手元に平成16年度からの合唱コンクール優勝クラスと自由曲の記録があります。
  ・平成16(2004)年度 3年7組 方舟(組曲「方舟」より)
  ・平成17(2005)年度 3年6組 むぎや
                 (組曲「富士に伝わる3つの民謡」より)
  ・平成18(2006)年度 3年1組 方舟(組曲「方舟」より)
  ・平成19(2007)年度 3年6組 人間
  ・平成20(2008)年度 3年3組 方舟(組曲「方舟」より)
             2年7組 航海
    ※ この年の優勝クラスは2クラスでした。
  ・平成21(2009)年度 3年8組 人間
  ・平成22(2010)年度 3年2組 あの空へ -青のジャンプ-
  ・平成23(2011)年度 3年2組 君歌えよ

 このように3年生の実力は圧倒的です。私は合唱コンクールの校長挨拶で「旅立ちの日に」という合唱曲の誕生を例にあげてこう結びました。「歌の力は大きいと思います。みんなで力を合わせて歌を作り上げることにより、クラスが変わったり、学校が変わることもあるのです。そして、歌は人間自身を変える力も持っています。」入賞を逃したとしても、歌の力によって、仲間意識が強まり、クラスが団結できたとすれば、そのことは入賞に負けないほどの大きな成果といえるのではないでしょうか。

 さて、第30回夏季オリンピック ロンドン大会が8月12日に閉幕しました。私たちは、自らの限界を恐れずに挑戦する選手たちの競技に感動しましたが、彼ら(彼女ら)の言葉もまた私たちに感動を与えてくれました。テレビや新聞等から選手たちの言葉を拾ってみました。
 ○小原 日登美選手
   「私一人では金メダルは取れなかった」(48kg女子レスリング:金メダル)
 ○内村 航平選手
   「皆さんの応援を、十分には力に変えることができなかったけれど、勇気と
    感動は届けられたと思うので、本当に、皆さんの応援に感謝しています」
   (体操個人総合:金メダル、同団体総合:銀メダル、同男子床:銀メダル)
 ○宮間 あや選手
   「期待を裏切ってしまったのではという不安もあったけれど、成田空港に着
    いた時のたくさんの声援、たくさんの温かいお言葉をいただいた時に、自
    分たちがしたことの大きさを、あらためて感じました」(女子サッカー:
    銀メダル)

 ○福原 愛選手
   「すべてを出し切って獲得した銀メダル。観客席のみんなのうれしそうな顔
    に、私もうれしくなった」(卓球女子団体:銀メダル)
 ○石川 佳純選手 「貴重な経験ができた。4年かけて中国との差を縮めたい」
  (卓球女子団体:銀メダル)
 ○松田 丈志選手 「康介さんを手ぶらで帰せない」(400mメドレーリレー:銀、
    200mバタフライ:銅)
 ○入江 陵介選手「(選手全員の)27人でリレーしていると思っていた」(400m
    メドレーリレー:銀、100m背泳ぎ:銅、200m背泳ぎ:銀)
 ○三宅 諒選手 「首にメダルをかけた時の重みで、これだけのことをしたんだと
    思った」(フェンシング男子フルーレ団体:銀メダル)

 ボクシング男子ミドル級で金メダルに輝いた村田諒太選手の高校時代の恩師である武元前川監督の言葉も味わい深いものです。「努力したから報われるわけじゃない。でも努力しないと報われない」村田選手は、故人となられた武元先生のこの言葉を胸に秘めて、頂点に立ったのだと思います。村田選手自身の言葉も私の心に響きました。「僕のあこがれは武元先生。先生こそたたえられるべきだ」
 村田選手のように、多くのメダリストが、仲間や応援してくれた人たちに感謝の言葉を述べています。あくまで私見ですが、一流のアスリートたちは、こういった謙虚な姿勢であることが共通しているように思えます。湧き水が低い所に流れ入り、やがて大海にたたえられるように、偉ぶらず控えめな態度だからこそ、その選手を支援しようと様々な人や団体が集まってくるのかも知れません。

 さて、8月9日は湘南高校合唱部が、「第79回NHK全国学校音楽コンクール」に参加することになり、私は、県立音楽堂に応援に行ってまいりました。参加校27校中、本校は最後の順番で、課題曲「明日(あした)へ続く道」、自由曲「混声合唱のための『地球へのバラード』より 地球へのピクニック」を歌いました。音楽堂一杯に響き渡る歌声は、ほぼ満席の観客を魅了しました。翌日から、全国大会に出場するために富山県に向かうというハードスケジュールの中で、部員達は一生懸命に頑張りました。コンクールが終わり、ホールで記念写真に収まる一人ひとりの顔が何と輝いていたことでしょうか。顧問の篠原先生も嬉しそうでした。

 翌10日は、吹奏楽部の「第61回神奈川県吹奏楽コンクール」県大会出場のために、神奈川県民ホールに出かけました。吹奏楽部は、7月26日に茅ヶ崎市民文化会館にて行われました「第13回湘南吹奏楽コンクール」で金賞をとり、県大会に駒を進めました。合唱と同じように課題曲と自由曲があり、いずれも本校吹奏楽部の素晴らしさが遺憾なく発揮されました。曲が終了すると、演奏者全員がすっくと立ち上がり、観客の拍手に応える場面はいつ見てもすがすがしさを感じます。
 演奏終了後、顧問の村田先生、米川先生と話すことができました。私はその後、学校に戻らなければならなかったので、「(金賞の)手応えは充分ですね。」と顧問に伝えて、結果を待たずに会場を後にしました。結果は惜しくも銀賞でしたが、来年の金賞につながる素晴らしい内容だったと私は思っています。

 夏休みに入る前に、体育館で行った校長講話の最後に次のような話をしました。「明日から、夏休みが始まるわけですが、湘南生は、勉強に、部活動に、体育祭の準備にと、普段よりも忙しい毎日を送る人がいるかも知れません。そのことを承知で、私は二つのことを皆さんに勧めたいと思います。一つは、長い休みを使って普段読めないような本を読んで欲しいということです。もう一つは社会貢献ということについて考えて欲しいということです。社会貢献を経験することは時間的に難しい人も多いでしょう。しかし、身近にボランティア活動をしている友人や大人がいれば、その人の話を聞くとか、マスコミにとり上げられた社会貢献の内容にじっくり耳を傾けるとか、目を通すとか・・・実際に活動できなくても問題意識を持つことは可能だと思います。(後略)」

 ボランティア活動といった社会貢献は、誰にでも出来るというわけではありませんが、読書の方はどうだったでしょうか。私は、この夏に読んだ本で一読を勧めたいのは、『歴史学の名著30』(山内昌之 ちくま新書 2007)です。『歴史学の名著30』は歴史学への誘いであり、歴史学とは何かといった問題提起でもあります。また、名著の分かりやすい解説書という側面も持っています。再読でしたが、山内先生の博識に触れるたびに、「時代と地域を横断して歴史を語れる数少ない一人」ということを実感します。
 山内先生は『歴史学の名著30』の「おわりに」というところで、10世紀のアッバース朝を代表する詩人ムタナッビーの言葉として「世の中で最も光栄ある場所は駿馬の鞍。時世において最高の話し相手は書物」という言葉を紹介しています。この夏、湘南生にとって「最高の話し相手」は誰でしたか。

 湘南高校の次の“Another Legend”は、いよいよ日本一と言われている体育祭です。


赤木初代校長の扁額
  
合唱コンクール
赤木初代校長の扁額
左から、加藤副校長、麻生美佐緒さん(61回生)と息子さんお二人、和田静子さん、湘友会篠田朗彦さん、羽入田
  
湘南高校合唱コンクール