それでも何とか投資を続け、納期を守ってきたのも事実だった。
しかし、シコーに大量発注が来ることはなかった。知らぬ間に競合のアルプス電気が、同様の製品を作る最新鋭全自動化ラインを作り、アップルはくら替えしていた。
「大口受注が突然なくなった」(白木社長)。今年8月10日、シコーは85億円の負債を抱えて経営破綻、民事再生法の適用を申請するに至った。
シャープ、ソニーの
最先端工場をわしづかみ
シコーで起きたことを、人ごととして笑うことはできない。日本の大手家電メーカーの最先端工場も、じつはアップルビジネスにどっぷり浸かっている。
「うちの工場がアップルの製品を作っていると、公表できないか」
かつて一世を風靡した液晶テレビ「AQUOS」を製造していた亀山第1工場、第2工場。ある関係者は、その先端工場群がアップルのiPhone5や新型iPad向けの液晶ディスプレイで支えられている事実を認める。
それどころか、目下の経営危機にあって、アップルからの受注は生命線。そのため、あるシャープ幹部はアップルに受注を公言できないか問い合わせたという。「でも、駄目だった」(同)。
シャープの亀山第1、第2工場、多気工場、マレーシア工場、ソニーの熊本工場にシンガポール工場、パナソニックの北京工場、東芝の四日市工場……。これらは、どれもアップル向けに最先端の技術を提供している工場たちだ。ソニー、パナソニック、シャープ、東芝……。日本を代表する電機メーカの多くが、アップルの注文で工場を稼働させている現実がわかる。