平成8年10月31日
3党連立政権は、「連立政治第1期」と位置づけられる、極めて貴重な2年余の間 に、55年体制下ではなし得なかった多くの ことをなし遂げた。これらの事柄は、自由民主党単独政権下では全く違う結果がもた らされたであろうことを考えるならば、いず れ歴史的に大きな評価を得るものと確信する。同時に連立政権は新たな創造的発展の 時期に入ったと考える。
以上の認識を踏まえ、総選挙後の新たな連立政権の枠組みを展望し、以下の通り合 意を得た。
○介護保険制度については、3党において選挙前にとりまとめた内容で次期臨時国会 に法案を提出し、成立を期す。
2.日銀改革及び金融行政改革について
○日銀改革及び金融行政改革については、3党においてとりまとめたプロジェクトチ ーム報告にしたがい、次期通常国会に日銀法 改正法案及び大蔵省設置法改正法案を提出し、成立を期する。その他の大蔵省改革に ついては、行政改革全体の中で引き続き積極 的に検討し具体化する。
3.NPO法案について
○NPO法(市民活動促進法)案については、3党においてとりまとめた合意事項に したがい、議員立法として次期通常国会に提 出し、成立を図る。
4.税制について
○税制のあり方については臨時国会で特別委員会を設置し、徹底的に論議を行う。今 後とも消費税の改革に大胆に取り組む。税制 民主主義の確立を図る。
1.行財政改革
○行財政改革の遂行にあたっては、国民の意思の反映たるべき「政」の役割を真摯に 確認し、「官」に対する指導力を発揮するこ と。また、社会システムの活性化や行政経費の削減を目的とする。
○総理の強力なリーダーシップのもと、民間人を中心とした総理直属機関を設置し、 省庁の機能別再編・統合、国・地方公務員の 思い切った合理化、国と地方の役割の見直し、行政に対する国民の信頼構築と透明性 の確保、財政再建法の検討など、霞ケ関大改 革を断行する。
○具体的な実施手順については、総理直属機関設置後、1年以内に成案を得る。直ち に法案化作業に入り、平成10年の通常国会に 提出し成立を期す。
省庁の再編・統合は法案成立後5年以内に実施する。それ以外の事項については、 できるものから直ちに実施する。
○確認事項
(イ)情報公開法案は、すみやかに提出することとし、立案作業を最大限急ぎ、早期 制定を図る。立法に当たっては、開示、不開 示について行政側の恣意的な判断を排除することに力点を置く。
(ロ)規制緩和については、経済審が検討中の6分野及び行革委員会における審議案 件を最重点として処理する。
(ハ)いわゆる天下りの問題については、新しいルールを早急に策定し、厳正な規制 を行う。
(ニ)内閣の機能を強化するとの観点から、政務次官等の役割の強化などについて早 急に検討し、結論を得る。
(ホ)特殊法人については、民営化、統廃合など大胆な改革を行う。
(ヘ)総理官邸のリーダーシップを強化するとの観点から、次の事項について検討を 行い、結論を得る。
a.省庁横断的な課題については、総合調整機能を強化すること。
b.予算の枠組み作成、国の主要人事、行政管理の機能を官邸機能と一体化すること。
c.歳入、歳出、財投、地方財政などの審議会を統合し、一つの事務局体制で運営する こととし、これを総理大臣に直結した諮問機 関とすること。
(ト)地方分権については、指針勧告の完全実施に向け、平成10年の通常国会が終 了するまでの間に地方分権推進計画を策定 し、機関委任事務制度、必置規制の原則廃止、補助金の整理・合理化、地方税財源の 拡充などを強力に推進する。
(チ)財政再建については、財政赤字のあり方についての合理的な基準や中期的な財 政再建計画、財政再建法について検討し、財 政構造改革を実現する。
2.政治改革
○社会民主党が提案している企業・団体献金の即時全面禁止については、政治資金規 正法付則9条、10条において、法律施行後 5年を経過した場合、資金管理団体に対する寄付の禁止、政党・政治資金団体に対す る寄付のあり方の見直しを定めていることを 踏まえ、自民、さきがけ両党は政治資金のあり方について今後、さらに協議を進める 。
○衆参選挙制度については議員定数の削減を前提にし、民意がより良く国政に反映されるよう、早急に選挙制度見直しを開始す る。
3.国会改革
○法律案の賛否について、クロスボーティング(党議非拘束による交差投票)の活用 の方策を検討し、すでに合意している議員提 出法律案件については、その促進を図る。
○議員提案の要件の緩和等について検計を進める。
○国会に行政の監視・監督・評価を行う機関を設置するとともに、そのためのスタッ フを強化する。
○二院制創設の本旨に則り、両院のあり方、役割、機能等の分担を明確にする。
○議会制度協議会を改組し、全政党の代表をメンバーとし、さらに実効性を高める。
4.消費税改革等
○税制のあり方について、国会に特別委員会を設置し、徹底的に議論し、税制民主主 義を確立する。今後とも消費税の改革に大胆 に取り組む。当面の具体策については早急に協議を行うこととする。
5.平和外交および沖縄関連
○歴史認識については、1995年8月15日の村山総理談話を基本にすえ、アジア 重視の外交を展開する。また戦後問題の残さ れた課題に関して検討する。
○アジアにおける安全保障対話を推進する見地から、ARF(アセアン地域フォーラ ム)の強化策等具体策の提案を行うととも に、アジア地域の軍縮に向けて積極的な提案を行う。
○「日米防衛協力のための指針」の見直しは、現行憲法や集団的自衛権に関する政府 解釈を前提として行う。その際は、近隣諸国 との関係に十分配慮し、誤解を与えないよう明確な説明を行っていく。
○核兵器のない世界を目指して積極的な役割を果たすため、まず包括的核実験禁止条 約の早期発効及びカットオフ条約(兵器級核 分裂性物質の生産禁止)の早期実現に向けて努力する。
○日米地位協定については、個々の問題毎に日米合同委員会合意等により、更なる改 善を図る。
○ODA(政府開発援助)の質的改善のために厳密なODA評価システムの確立と情 報公開、NGO(非政府組織)との連携を進 める。また国民の理解を促進するために開発教育を推進するとともにODA広報の充 実を図る。
○大使の省外(民間人も含む)からの任用に積極的に取り組む。
○沖縄県の提起している3点の要望を重く受け止め、沖縄米軍基地の整理・統合・縮 小に向けて更なる積極的努力を行うととも に、沖縄県の国際都市形成構想、規制緩和等産業振興特別措置の促進に全力を尽くす 。また、アジア情勢の安定のための外交努力 を行うとともに、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議する 。
6.社会政策
○社民党提案の社会政策に関する少子高齢化への対応や、部落差別をはじめとするあ らゆる差別意識の解消など、各項目について 概ね合意したが、選択的夫婦別姓制度導入などを内容とする民法改正については、国 民生活や日本の伝統文化に大きな影響がある ことなどから、国民の意見を幅広く聞きながら検討する。
7.環境政策
○社民党およびさきがけ提案の環境政策の各項目については概ね合意したが、原発立 地については環境アセスメントに万全を期し 住民の理解を得つつ推進する。
○なお、いわゆる「みどりの行政改革」については、行政改革全体の中で措置する。
8.農業政策
○社民党提案の農業政策の「水・土・緑」の保全など、各項目については概ね合意し た。
9.女性政策
○社民・さきがけ両党提案の女性政策については、男女共同参画社会を実現するため の「女性基本法」制定、男女雇用機会均等後 の改善・強化などについて概ね合意した。
10.子どもをめぐる問題
いじめ等に悩む子どもたちの声を受け止めるため、24時間ホットラインの整備を はじめとした緊急のとりくみを進める。
(2)非核保有国会議を早期に開催し、核不使用・核廃絶条約の締結、北東アジア非 核武装地帯設置の実現を期す。
(3)主権国としてのわが国の地位を明確にするため、日米地位協定の改定に取り組 む。
(4)平和的・民生的な視点に立つODA基本法を制定し、対外援助を国会の監督下 に置くとともに、NGO活動の発展を積極的 に支援する。
(5)格段に厳しさを増している財政事情を踏まえ、沖縄米軍基地の整理縮小関係経 費は、中期防衛力整備計画の所要経費見直し 条項で減額修正することによって、財政的に措置するとともに、いわゆる「思いやり 予算」のあり方を見直す。
(6)沖縄の米軍基地のさらなる縮小のため、まず海兵隊の縮小、さらに撤退に向け た日米交渉を行う。
(7)選択的矢帰別姓制度や婚外子差別の撤廃を含む民法改正案を提案し、成立を期 す。
(8)原子力発電の新設計画は、環境アセスメント法によるアセスメントを行うとと もに、関係住民の意思を間うようにする。
(2)介護サービスの質の維持と向上のため、常時介護サービスの監視・苦情処理を 行う第三者機関設置を介護法案に盛り込む。 その際、第三者機関の2分の1を女性にする。
以上、合意に至らなかったが、さらに協議を継続することとした。