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『佐賀県/武雄市民病院 「民間移譲 議論不十分」 地元医師会が市に意見書』

2008.05.29西日本新聞 

武雄市が民間移譲を決めた武雄市民病院について、武雄杵島地区医師会(古賀義行会長)は二十八日、同市に対し、早急な移譲先の公募は行わず、専門家や市民の意見を聞いたうえで判断することを求める意見書を提出した。

 意見書は、同市が地域医療に対する権限と責任をどう維持するかを明確に示さないまま、民間移譲の既成事実を作り上げようとしていると指摘。市民病院放棄の言い訳にすぎないとした。  意見書を提出した。古賀会長は「市民病院の機能は市民にとって必要不可欠で、公募の前に病院形態の中身を議論すべきだ」と同市のやり方を批判。樋渡啓祐市長は「厳しい医療環境を考えて、経営形態を変えて市民医療を守りたいとの思いから決断した」とあらためて理解を求めた。

 民間移譲をめぐっては、移譲先を決める選考委員の経費などを計上した一般会計補正予算案などを審議する臨時議会が三十日に開かれる。同医師会は市議長にも同様の意見書を二十九日に提出する予定。


  
佐賀県/武雄市民病院 10年2月に民間移譲 条件付きで6月公募 県内初めて打ち出す 市が改革案を発表

2008.05.21西日本新聞  

 武雄市の樋渡啓祐市長は二十日、経営形態の変更や医師不足など問題を抱えている武雄市民病院について、二〇一〇年二月に民間移譲することを骨子とした改革案を発表した。移譲するまでの今後二年間についても医師を派遣してもらうなど条件付きで移譲先を一般公募する。公立病院の民間移譲を打ち出したのは県内では初めて。

 改革案では、経営形態の一つとして検討していた地方独立行政法人は、医師の確保を大学医学部に頼らざるを得ない点に問題があると指摘。人材確保や育成のノウハウを持つ民間医療機関に経営を委ねた方が医師を確保しやすいと判断した。医療面でも経営の柔軟性を生かして市民のニーズに応じた診察体制が迅速に整備できるという。

 公募方法は(1)救急医療を行う(2)地域医療機関との連携−など六要素を踏まえ、事業提案を受けて審査する「公募型プロポーザル方式」を採用。市営を維持する期間も医師の派遣を要請する。地元の医療関係者など有識者で構成する選考委員会を設置し、六月二日に公募要領を公表して公募を開始。六月下旬までに移譲先を決めるという。
 樋渡市長は「新病院開業時までには救急医療を完全に復活させたい。民間移譲が地域医療の維持向上につながる」と理解を求めた。

これに対し、武雄杵島地区医師会の古賀義行会長は「民間移譲で市民病院の役割が維持できるのか疑問だ」と話している。

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 ●公的役割の維持可能か

 【解説】武雄市が市民病院の民間移譲を打ち出した背景には、厳しい財政事情がある。短期的には経営できても、医療水準維持のため機器更新や新築移転など中長期には膨大な投資が予想される。市民病院の前身である国立療養所を国から譲渡された際の「十年は直営維持」という期限を二年後に控え、同市が早めに動いたことが皮肉にも病院経営の悪化を早めたとの指摘もある。
 その最大の理由は、地元医療関係者との意思疎通を欠いたこと。改革案では地域の医療機関との連携を挙げているが、地元医師会の中には「民間が本当に公的役割を果たすのか」との不信感は根強い。「多少の赤字は覚悟しても市が経営すべき」という市民の声も少なくない。民間移譲で地域医療の公共性をどう守っていくのか。市には重い責任が課せられている。 (武雄支局・田代芳樹)