リーダーがぶれてはいけない
12年6月の岩手日報のインタビューでは「全量固定価格買い取り制度で、再生可能エネルギー事業はある程度ぐっと伸びる。発送電分離と送電網の広域化が、再生可能エネルギー普及の一番のポイントになる」と語っている。送電網の広域化は、風況のよい北海道や東北での風力導入拡大を図るうえで有益である。一方、発送電分離は、公正・透明な競争を担保する一手段として論じられており、コスト高で競争力のない再生可能エネルギーの導入拡大とはそもそも無関係である。
同じ6月の市長定例会見では「期間を限定しない再稼働は、国民生活ではなく電力会社の利益を守ろうとしているだけ」とまで言い切ったが、電力会社が名誉毀損で訴えてもいいくらいの悪質な内容だ。
過度の節電を余儀なくされたことで、熱中症の犠牲者は増えている。電力の安定供給に国民の生命を守る以外の目的があるのか。行政の長として、責任を感じてもらいたい。
8月1日の定例会見では「エネルギー問題は選挙の争点にせざるを得ない。(中略)選挙で国民の皆さんがどの方向に進むのかを決めて、決めた以上は責任を持ってもらう」と発言。同9日には報道ステーションに出演して「(原子力比率の)国民的議論は必要ですけど、方向性を決めるのはトップか責任をもった政治家が方針を決めないと無理ですよ」と語った。真逆の内容だ。2つの発言の中でぶれていない点があるとすれば、エネルギー問題を選挙戦で利用したい、という意図だけだろう。
大阪市の特別顧問・特別参与は60人を超えた。3人よれば文殊の知恵というが、60人プラス橋下市長が考えた結果がこれなのだろうか。ブレーンは、あくまで量より質なのだ。
橋下市長の電力関係の発言を追ってみると、ソフトバンクの孫正義社長の言動に非常に似ていることがわかる。
将来は総理大臣になろうという人間が、あの孫と知的レベルが一緒ということで本当にいいのだろうか。非常に心配である。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
『リーダーの掟』(プレジデント社)
[著] 飯島 勲
大反響!1000億稼ぐ人の気配りメモ
大人気連載の書籍化。本書にて、プーチンが「可能性を本質的な形で高める」と世界に向けて絶賛し、野村克也が「本当によく調べましたねぇ」と脱帽した段取りの秘密が明かされています。