お花見レガッタの後で、知人と雑談していたら、シングルスカルの自艇を購入する予定という話を聞いた。そこで1X艇モールド(船型)や仕様に関して、おやじの知っている事を一通りアドバイスした。
この中で、リガー形式についても、Wing Riggerという選択肢があることにも触れた。おやじ自身も昨年末からWing Rigger艇に乗っており、その特徴を良く知っている。良い機会なのでWing Rigger形式のシングルスカル艇について、長所、及び、短所についてここで整理したい。
■Wing Rigger艇の長所;
- 大骨フレームが無いのでレール間隔が広い;3脚式リガー艇にはメインステーを固定するための大きなフレームが取り付けられている。
一方、Wing Riggerの場合はストレッチャー付近のガンネルに固定されているので、この大きなフレームが不要となる。
大骨フレームが無くなることにより、レールの間隔を広げることが出来る。レールの間隔が広がると、シートの座面が大きくなりすわり心地が良くなると共に、シートのガタツキが減りスライドの滑りがスムーズになる。また、脹脛がレールに当り難くなるのでストレッチャーを十分に下げられる様になる。=バランスが安定する。
- リガー取り付け位置が高いのでラフコンに強い;3脚式リガーだと、ラフコン時にメインフレームの下側のパイプに波頭が当って飛沫が上がり、艇内にスプラッシュが入りやすい。一方、Wing Riggerはガンネルの上に載っているので、ガンネルを超える大波でもない限り、リガーに波が当ることは無い。ラフコン時でも艇内がドライな状態で気分良く漕ぐことが出来る。

- リガー位置が高いので、少々乾舷の大きな船台からでも艇を傾けずに乗り降り出来る。
- 艇をハンドリングしやすい;メインフレームが無いので艇を担いだり反転させる際にバックステーの内側に容易に入り込みやすい。従いハンドリングが楽。
- 取り付け・取り外しが容易;リガー一体で、艇の上に載せるだけなので遠征時の組立が短時間で出来る。
- ローリング運動に対してダンピング効果あり;リガー自体の慣性モーメントが大きいこと、また、その名の通り翼型をしているので、艇がバランスを崩した時に少しだがローリングに対するダンピング効果がある。
- 空気抵抗が小さい;Wing rigger本体の断面形状がCd値(抵抗係数)の小さい翼型断面形状をしているので、通常の3脚リガーに比べると空気抵抗が小さい。一方、スカルの空気抵抗の大半は漕手とオールの抵抗なので、はたしてリガーの空気抵抗の差が有意な差として現れるかどうか、やや懐疑的。
- リガーも含めた艇全体の剛性アップ;ボートはローイングスペースがオープンな構造なので、この部分の強度を如何に確保するかが造船所の知恵の見せ所。Wing Riggerはガンネルの上に固定されているので、リガー自体がガンネルを固めるブリッジ構造となる。従い、Wing Rigger艇は通常の3脚リガー艇より剛性が強い。また、オールを漕ぐことにより発生するクラッチ軸の横力、即ち、艇を横方向に圧縮したり開いたりする力を全てリガー本体が吸収し、艇には推進力のみが伝わるので艇に余計な力が加わらず、艇に優しい構造となっている。
■Wing Rigger艇の短所;
- リガーが重たい;通常の3脚リガーに比べるとリガー自体の重量は重たい。カーボン製ならFISA min.重量の14kg程度で出来上がるが、アルミ製のWingリガー艇でFISA min.重量以内にしようとすると、船体はオールカーボン素材の高価な軽量素材とする必要あり。ただ、日本人の様に軽量級漕手用の艇ならケブラー素材のハルでも何とか14kg程度で出来るか?(アルミウィング艇は14.5kg程度になると思った方が良さそう)
- リギング調整範囲が限定される;3脚リガーの場合はリガー取り付け穴が3個あるので高さ調整の幅が広い。また、前後傾や外傾などについてリガーを曲げて微調整することも可能だが、Wing Riggerの場合はピンの長さの範囲内(±20mm程度)しか変更出来ない。また、リガーがガッチリしているので、ピン角を変更するために曲げることは殆ど不可能。従い、Wing Rigger艇を発注する際には、自分にピッタリのリギング値で注文する事が必要。色々な体格の漕手が利用する様なクラブチームの共用艇には不向き。
- 運搬時にリガーが嵩張る;リガーが長さ165cm程度の大きな一体モノなのでマイカーで運搬しようとすると大きな車でないと車内にリガーが収まらない可能性あり。
- ストレッチャーの調整にやや難あり?:リガーの下にストレッチャーがある。リガー取り付け位置が低いとローイングシューズのつま先とリガーがタッチしそう。また、ストレッチャー前後位置を調整する際に固定ナットを回す際に狭いスペースに手を突っ込む必要があり、面倒くさがりは手を焼きそう。昔からWing Rigger艇を製作して、この辺りにノウハウのある造船所の艇ならOK。何れにせよ、発注前には現物をよく見て確認しておくことが必要。

■本日のトレーニング;
花粉症で体調が優れない中、お花見レガッタで頑張りすぎた為か、昨日は疲れがドッと出て一日自宅で休養を取った。今日は夜間乗艇する予定だったが、無理は禁物、自宅でのエルゴ60分漕に切り替えた。以下、本日のエルゴデータ;
- 時間:60分
- Drag Factor: 138〜140 (135でスタートしたが、途中からDF値が上がった)
- 漕破距離:15288m
- 平均ペース;1'57"7/500m (概ね95%負荷レベル)
- 平均SR:25 (今日は高めレートで実施)
自宅でのエルゴトレーニングは、いつでも実施できるので便利だ。
以上