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おやじスカラー戸田便り

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2006-04-04 ラフコンに強いボートとは?

oyajisculler2006-04-04

今年のThe Boat RaceもOxfordが勝った。強風下、かなりのラフコンでのレースだった様だ。ラフコンに上手く対処するには、漕ぎ手の対応能力の巧拙が大きいが、艇・リガー選択の占める割合も大きい。テムズ川が時として酷いラフコンとなることは、両校とも百も承知であり、ラフコンに強い艇及びリガーの組合せを選んできた経緯がある。今年の対校クルー(The Blue)が選んだ艇は、昨年同様にEmpacher K85のアルミWingリガー艇。艇・リガーの組合せでは、ラフコン下、現時点ではこれが最良の組合せということだろう。右上の写真は酷いラフコンの中で練習するOxfordクルー。ラフコンに強い艇に乗り、こういうラフコンでレースをするのも面白そうだ。

ラフコンに強いボートとは?:

  1. 乾舷が大きいこと:即ち水面からガンネルまでの高さが高いこと。
  2. リガーが波に当たらないこと:ガンネルより上にリガーがあるWingリガーがベスト。通常の3脚ダブルパイプリガーは、フロントステーの下のパイプが当たって波が艇内に浸水しやすい。3脚式リガーの場合はAeRoWingリガーか、フロントステーがシングルパイプの形式がベターだ。CarbonチューブのTwo Stayリガーはフロントステーがないので良さそう。
  3. 安定性が良いこと:漕手の技量にも拠るが、安定性の良否は重要な要素だ。
  4. 直進性が良いこと:強い横風に煽られると艇が横流れしやすい。こういう状況下で舳先や船尾の浅い船型では、横流れして針路が保ち難い。ラフコンでは舳先や船尾がドップリと深く喫水下に浸かった船型の方が安定している。

以上の要件を踏まえて、ラフコンが想定されるレースで、最良の艇を選択すると、自ずとEmpacherのWingリガー艇ということになる訳だ。(安定性の面に関しては、K85より幅が広く安定性の良いK82の方が良いと思うが、今は生産していない模様。)

EmpacherのスイープWingリガーは他と異なる工夫あり:

Wingリガーエイトで有名なのは米国やカナダのナショナルクルーが使用しているHudson艇だ。日本ではTレやKO大が昨年から使用している。これを見れば気付くだろうがガンネルが低く、乾舷が非常に小さい。何故こうなっているのか?理由は以下の通り:

  1. ラフコンで波が高かったり、バランスを崩した時にハンドルをガンネルにぶつけて指を怪我することがある。ガンネルの上にリガーが載っているWingリガーの場合は更にこの危険性が増す。これを勘案してWingリガー搭載艇ではガンネル高さを通常の3点式リガー搭載艇より低め(3〜4cm程度?)にしてある。
  2. この為、Wingリガー搭載艇は、波の大きいラフコンになると波頭がガンネルを超えてガンネルから浸水しやすい。
  3. 以上を勘案すると、Wingリガー艇は、必ずしも通常の3点式リガー艇よりラフコンに強いとは言えない。寧ろ波に当たり難いAeRoWingリガーを搭載した通常艇の方がラフコンに強いと思う。実際、両方の艇を有するKO大は、隅田川での早慶戦にはAeRoWingリガー搭載の通常3脚リガー艇を使うだろう。
  4. 通常型のWingリガー艇は捩れに弱い:Wingリガー搭載艇はガンネルが低いということを述べたが、ガンネルが低いということは艇の深さが浅いということだ。艇の深さが浅い(低い)艇、即ち薄い板を想定して頂ければ分かるが、捻り強度が弱いということだ。新品の内は良いが、長い間練習で使ったりした場合、通常の3脚リガー艇より艇が早く痛むと推察する。即ち、練習艇には向かないと思う。

f:id:oyajisculler:20060405163556j:image

さて色々述べたが、上記のWingリガー艇の欠点を補う為、EmpacherのWingリガーは賢い工夫がしてある。即ち、リガーと逆サイドの支点をガンネルでなくデッキ位置まで下げ、Wingリガーのブリッジを斜めにしている。これにより、ラフコン時にハンドルを握る指がWingブリッジに当たらない様にしている。(通常のWingリガーのブリッジはガンネル間を渡してあり、水平になっている)この工夫でガンネル高さ通常通りの高さを保っている。素晴らしい工夫だ!問題はこの歪な形状を採用したため、ブリッジを固定するデッキ周りの補強材が必要となり、艇の重量が通常のアルミ3脚リガー艇より重くなっているという話だ。(ガンネルが高いという点も重さに影響している筈)また、聞くところではワークハイトの調整等、リギングの調整可動域が3脚リガーの様にフレキシブルな調整は出来ない模様。尚、価格の方は3脚リガー艇よりホンの少し高いだけで、Carbonチューブ式リガー艇よりは廉い模様。

日本国内でのベストの選択は?:

先ず戸田コースであれば、上の写真のような酷いラフコンになることはない。台風でもくればそういうコンデョションになることもあろうが、その前にレースは中止になるだろう。隅田川や宮城県長沼でのレースを念頭に置けばEmapcherのWingリガー艇が威力を発揮する場面もある。しかし一般的なボートを漕ぐ水域では、通常の3脚リガーで支障が出る様なコンディションは想定しづらい。相当酷いコンディションが想定されるのであればフロントステーがシングルパイプのリガーを搭載すれば、それで十分と言えそうだ。フロントステーがシングルのリガーはVespoliやSykes艇には標準装備されている。必要ならAeRoWing若しくはNeaves等のリガー専門メーカーに注文すれば良い。

HudsonやSykesのスイープWingリガー艇は写真で見る限りEmpacherの様な工夫が無く、乾舷が小さいためにラフコンで浸水しやすかったり、捻り強度不足が懸念されるので、レース専用艇という扱いが出来る裕福なクラブしか持てないような気がする。新艇購入を検討されているクラブは上記の点も勘案して、高い買い物である新艇発注を失敗しない様にして欲しい。

尚、上記は全てスイープ艇での話であり、スカル艇についてはWingリガーの欠点というのは外した時に大き過ぎて場所をとるぐらいのものかと思う。(でもマイカーで運搬するときには重要な要素かもしれない。)

以上

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プロフィール

oyajisculler

oyajisculler はてなダイアリープラス利用中

14年間のコーチ経験を経て、漕手に復帰した「おやじスカラー」

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