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スカルのワークハイト左右差をどう設定すべきか、これは難しい問題である。例えば、日ボ発行のRowing For Allにはこう書かれている。即ち、
「一般的にはシングルスカルで5mm〜15mm, クルーボートでは7mm〜20mmくらいである」
嘗ておやじが大学生や20歳代前半の現役漕手だった頃は何も疑わずに左右差を10mm〜15mm程度にして漕いでいた記憶がある。おやじがT大のHCをしていた頃も学生にその通り指導していた。尤もおやじは専ら対校エイトのコーチングをしていたのでスカルの指導は片手間だったが。。。
さて、2004年以降現在に至るまで、今は専ら自分自身のスカリングテクニックの向上が最大の関心事である。初めの頃は左右のハイト差を15mm程度にしていたが、ハンドルクロスオーバー時に左右のブレード深さがアンバランスになったり、艇が傾いたりして中々安定しなかった。おやじ自身は元々スイープのエイトやフォアを主体に漕いでいたRowerなのでRowing中に艇がローリングするのが大嫌いな性分である。スカルを漕ぐときになかなかバランスが安定せず自分で漕ぎながら、上手く漕げない事に対し、頭に血が上ったりした。そんな中でおやじの戸田で大学時代にボートを漕いでいたO林氏からスカルの左右ワークハイト差は20mmなんかじゃ少ない、25mmは必要。あるいはもっと差を付けても良いんじゃないかという話を聞いた。その後1X自艇では先ず20mm差を付けて漕いだところRowing中のローリングや左右のブレード深さのアンバランスが大分解消された。さらにその後会社ボート部の同僚と2Xを漕いだところ、20mmでは足りず、差を25mm付けて漕いだところ、大分良くなった。そういう経緯もあり、現在のところ、1X自艇では左右差23mm、2X以上のチームボートでは、左右差を25mmをLBRCの標準値として採用している。また、現在開発中のレク艇でも左右差25mmを標準値とする予定。
さて、先日のシート座面の計測点のあり方に続き、スカルのワークハイト左右差のあり方について、ここで改めて考え直し、おやじの考えを纏めたい。
以前、このブログでも紹介したことがあるが、2003年イタリアで開催された世界選手権LW1Xで優勝したカナダのFiona Milne選手のローイングサイクルのコマ送り写真が下記サイトで紹介されている。
http://www.invernessrowingclub.co.uk/personal/fionamilne/fiona.html
このサイトからMilne選手のキャッチからフィニッシュまでの写真をピックアップし、左右のグリップエンドの高さの関係をチェックしてみた。下の写真参照:
この写真に、左手のグリップエンドの高さを緑色のライン、右手のグリップエンドの高さを赤いラインで示した。見ると一目瞭然、左右のグリップの高さは拳一個分約6cm程度の差がキャッチからフィニッシュまで常に維持されている事が分かった。
前述の漕ぎ方はMilne選手だけかというと、そうではなく他の世界の一流選手も同じ様にキャッチからフィニッシュまで拳一個6cm程度の左右差をキープしたまま漕いでいることが分かった。例えば:
さて、上記の通り、世界の一流選手はハンドルクロスオーバー時にだけ、左右のグリップを上下に交わしているのではなく、クロスオーバー時の左右グリップ上下の差をキャッチからフィニッシュまでずっと固定して漕いでいることが分かった。思うにレースペースで漕いでいる最中に途中でハンドルの高さ軌道を変える方が面倒なので、クロスオーバー時に必要な左右グリップの高さの差で、ずっと漕ぎ続けているだけのシンプルな話である。さて、さらに詳細に写真を見ると何れのクルーも左右のワークハイト設定に余り差を付けていないためか、S-sideに艇を傾けたまま漕ぎ続けている。まあ、これで長く漕ぎ続けているので、彼らは最早気にしていないのかも知れない。しかし、艇を傾けると艇の進路が曲がったり、抵抗が増加したりと良い事はない。やはり艇は左右水平の状態で走るのが最も抵抗が少ない。また、現在開発中のレク艇は安定性が良いので、逆にRowing中に艇を傾ける事が出来ないので左右のワークハイト差は必要分だけ確りと付けないと逆に漕ぎにくくなる。
さて、ここからは、おやじ得意の図学の登場。ここでは現在、レク艇の試漕で使っているスカルオールの設定値で試算してみる。詳細は下図の通り。
図を見れば分かるが、左右のワークハイト差とグリップエンドのハンドル高さの差の関係は以下の通り:
前述の通り、世界の一流選手がやっている通り拳1個分6cm程度の左右差を付けるには、ハイト差で4cm必要という事になる。まあ、4cm差というのは、余り聞いたことの無い大きなハイト差だし、実際にどの程度のハイト差を付けると、艇が水平を保ったままでも漕ぎに支障が出ないかという問題を確認したい。少なくともグリップの太さ分ぐらいは左右のハイト差は必要という意味で2.5cmのハイト差が妥当の様に見える。安定性の良いレク艇のリギング試設定では2.5cmのハイト差を付けて漕いでいるが、概ね調子よく漕げている。レク艇の試漕で漕いだ被験者も、おやじも含めて漕ぎやすかったという事で好評を得ていることも勘案し、ハイト差2.5cmは妥当な値であるというのがおやじの結論。
本件、興味のある方は試してみては如何だろうか?
参考ながら、ハイト差を広げる際には、S-sideは現状のままにして、B-sideを上げてハイト差を付けると違和感なく漕げると思う。そして、艇の安定性や左右のブレード深さのアンバランスが解消される事が実感できると思う。
以上
私はクロスの時に左右を重ねるようにしないといけないと思っていましたが、必ずしもそうではないのですね。何事も検証が必要だと再認識しました。貴兄の探究心に脱帽です。
現在、日ボのPJとして全くのボート初心者でも楽しく漕ぐことが出来るレクレーション艇を開発するための検討及び実験をしているところです。リギング設定も検討すべき課題の一つであり、初級者でも簡単に漕げる設定を考える必要があります。その中の要素の一つとしてハンドルクロスオーバー時に必要となるワークハイトの左右差の問題がありました。自分自身の経験からチームボートでは艇を傾けずに水平を保ったまま漕ぐには左右差25mmは必要である事を経験的に知っていた訳ですが、昔からスカルを漕いでいる人の中には、この事が良く知らない人が意外に多い様です。驚きだったのが、世界の一流スカラーも余り左右ハイト差をつけず、艇を傾けて漕いでいるという事実ですね。きっとコーチが教科書に書かれている数値に設定する様に厳しく管理しているのでしょう。ボート関係者は基本論に煩い人が多いですから。。。。
でも今回は初級者相手のレクレーション艇。昔ながらの基本論なんかより、漕ぎやすさを優先し、参入障壁を打ち砕くことが目的です。今回、写真を整理し、試算した結果、ハイト差は25mm以上40mm程度付けてもオカシクナイ事が分かりました。まああんまり大きくすると別のところで問題が生じるかもしれないので必要最小限ということで25mm程度が良い様に思われます。
レク艇、意外にボート界のカービングスキー的なモノになるかも知れません。
今度はオーバーラップについても初心者用に解析お願いいたします。 現状は、まずオーバーラップの数値がありそれに合わせようとスカラーが苦労しているようです。 オーバーラップは身長差=レンジ差(脚・腕)から生じるものでは? ファイナルでのグリップの収まる位置が重要であり、巷に言われている18cmは日本人には大きいと思いますが?。 身長でオーバーラップ数値を示している表もありますが、それでもやや大きい気がします(特に低身長の者には)。
小生のこぶしは6センチなので、ハイト差4センチであればクロスオーバー時にての甲を引っかいて血を流す必要も無くなって来るはずですね。そのうちやって見ます。
現在MBCMF4X+は2センチの左右ハイト差にしていますが、氏家さんの検証を参考にして3センチにして暫く漕がせて見ます。深謝。
コメント有難うございました。
今回のレク艇は、初心者のボート漕ぎを重視したものとしています。その意味で出来るだけ簡単に、そして気持ちよく漕げることを最優先しようと考えます。そういう意味ではワークハイトの左右差は3から4cmの大き目にしても良いかも知れません。何れにせよ、その辺りのアジャストの余裕代は大きめにしたいと思います。
ボートによるツーリング、日本でも広めたいですね。お花見の時期に川の水面から見上げる桜堤、きっと奇麗でしょう。