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「渾身」(日本映画):隠岐の島の「遷宮相撲大会」を舞台に感動的なロマンスを描く錦織良成監督の最高傑作

 FCCJヒューマン・リソース担当の福永正明セカンド・プレジデントは「ジキル博士とハイド氏」と言う驚くべき二面性の顔をもっていることを発見した。
彼はブータン国王夫妻の来日で一躍有名になったGNH(GROSS NATIONAL HAPPINESS=国民総幸福量)のメンター、皆が幸せに暮らせる社会を作ろうという日本GNH学会の常任理事なのだ。最近では『ブータン人の幸福論』と言う徳間書房から出版された幸福への手引書を監修している。これは誰でもが幸せを願うジキル博士の顔。
この表の顔で外国特派員協会(FCCJ)の従業員にあたってくれたらどれだけ皆がHappyで福永氏は流石GNHの実践者と感謝しただろう。
だがFCCJで見せる福永・ハイド・正明氏の顔は悪魔だ。36名の大量馘首を断行したのが7月末。家族を含めると100人近くの人々が路頭に迷っている。
 FCCJの労組UPCは8月半ばに、福永HR担当SPから馘首された36名の中から「10名の地位保全」を東京地裁に訴えているが、その反論として福永SPが裁判所に提出した公式文書に中村AGMに集めさせた噂やデマに基づいた虚偽、根拠不明の憶測を書き連ねている。解雇された従業員たちは「お金持ち」で「生活に困っていない」とする文書を恥ずかしくも無く(厚顔無恥と言う)裁判所に提出していたのを裁判官が労組に明かしたのだ。彼らの多くは東南アジアから来て派遣社員やアルバイトで働いていた。ダライラマを信奉しブータンのGNHを推進する表の顔と裏腹な残酷無比の行動。FCCJの冷酷な政策を心に一点の曇りも無く実施に移す責任者こそ、GNH運動推進者の福永・ハイド・正明氏なのだ。
 
 監督・脚本の錦織良成は島根県で生まれ育ち、大林宣彦のように郷土愛が非常に強い。島根3部作として「白い船」「うん、何?」「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」など丹念に作っているが今一つ心に届くものが無い凡作だった。島根の沖合の海に浮かぶ隠岐の島を舞台にしたこの映画はやはり故郷愛の発露の作品だ。
 だから期待しないで長尺(2時間14分)を我慢する気持ちで見始めたら途中から泣ける泣ける、映画が短く感じるほど感動的なのだ。それも三流の監督だったら観客におもねるチープなエンディングにするのだが裏切り方が素晴らしい。すっかり錦織監督を見なおした。彼のベストの作品になるだろう。

 主人公の多美子(伊藤歩)のナレーションで映画は始まる。夫の坂本英明(青柳翔)は評判が悪い。結婚式をドタキャンして麻里(中村麻美)と駆け落ちし一緒になって島に戻って来た過去がある。英明の両親は勘当した息子夫婦を認めず、因習にとらわれる島の人々たちも二人には冷たい目を向ける。しかし麻里の親友だった多美子と母親弓子(宮崎美子)と父親久成(中本賢)の助けを受けて英明も就職もし生活も安定して島で生きる覚悟をする。
 だが麻里は琴世を産んで間もなくガンで他界する。シングルファーザーとして働きながら島に伝わる「隠岐相撲」に黙々と励む英明。島の人々に認められるためにはその頑丈な体躯で20年に一度の「遷宮相撲大会」に地区の代表として出場することなのだ。幼稚園から帰っても一人ぽっちの幾世(井上華月)を世話し夕食の支度をするのが多美子の毎日の仕事。相撲コーチの山本清一(甲本雅裕)は一生瓶(隠岐の誉)を抱えながら大声で叱咤激励をしている。遷宮相撲が間近になって英明と多美子の気持ちが通じ一緒になることを誓い合う。ここまでの二人のロマンスが余りにも日本映画的ウジウジしたクリシェで結末が分かっているだけにイライラする。
 だから映画の冒頭では幾世に「あの姉ちゃん」じゃなく「お母さん」と呼ばせる苦労をする多美子が描かれる。全体はカットバックで過去に戻っているのだ。
 クライマックスは番付で最高位の「正三役大関」に選ばれた英明と大阪で働いていてこの大会のために島に戻った実力ナンバー1の大関、田中敏夫(粟野史浩)の最後の取り組み。待ったが2回、水入りがあり、土俵際の両方の投げの同体で落ち取りなおしと、延々と勝負はつかない。

「遷宮相撲大会」の相撲の縦軸と英明と多美子、山本と大林伸江(財前直美)のロマンスを横糸に物語はぐんぐん観客を巻き込んで行く。
 前座の相撲や練習を含め取り組みはガチンコで見事。撮影用にシナリオ通りの手順は無いようだ。地元の隠岐相撲の人たちが協力している。
 主役の伊藤歩はそこそこだが、初めて見る英明役の青柳翔が良い。劇団EXILE所属で舞台俳優だが筋骨隆々の体躯の上にハンサムで精悍な顔が乗っている。人気があるがナヨナヨした俳優ならばしらけただろう。「渾身」と言うタイトル通り頭からガチン(凄い音が響く)とぶつかりまわしを取っての四つ相撲は見応え充分。泣かせるのは子役の井上華月、余り美形では無いが表情が上手い。ようやく多美子を「お母さん」と呼ぶシーンは感動的だ。
 脇を固める役者が豪華。中村嘉津雄、高橋長英、隆大介、笹野高史、長谷川初範と主役級がズラリと顔を揃える。
 隠岐の島の夜明けの景色のゴージャスのこと。島の姿を見ると竹島、尖閣諸島を思い出しギスギスしたささくれ立った感情になるが、穏やかな海と断崖絶壁の向こうに陽が昇るシーンは天国だ。
化粧回しとか劇中のTVの相撲中継で島出身の「隠岐の海歩」と巨体がチラチラするが映画の中では取り立てていない。原作は川上健一の同名の小説。
こんな感動的な映画は是非ヒットして欲しいがTV局とのタイアップは無さそうだ。

 新春13年の1月12日より松竹系で全国公開される。

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