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おやじスカラー戸田便り

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2005-02-12 オールを引く力(ベンドカーブ)について

oyajisculler2005-02-12

今日は、オールの引く力、即ち、ベンドカーブについておやじの考えを纏めたい。

尚、右上に理想のベンドカーブ(水色で塗ったカーブ)についてイメージを書いてみた。実際のベンドカーブはキャッチやフィニッシュでロスがあるので、前後の面積が減って、もう少し痩せたカーブになるが、こうあるべしというカーブのイメージとして書いてみた。(勿論、これはレースペースを漕いでいるときのイメージ)

オールを引く力:

ボートを進める力は、漕手がストレッチャーを脚で押して、ハンドルを引くことにより、ブレードを支点としてシャフト(スリーブの部分)がクラッチ軸を押すことで発生する。(純粋な推進力はクラッチ軸を押す力から、脚がストレッチャーを押す力を差し引いた分となる。)

つまり、オールがクラッチを押さない限り、ボートは進まない訳である。このクラッチ軸に加わる力を時系列でモニターする方法として次の2種類がある。

  1. クラッチ軸に歪ゲージ(ストレンゲージ)を貼り、推進力方向の軸の歪を力に換算して、モニターで表示する。これは、推進方向への力を把握するという意味で良いデータが取れるが、オールはクラッチ軸を中心として回転運動をしているので、キャッチやフィニッシュ等、オールが横方向の力を発生している時に、漕手がどれだけの力でオールを引いているかを直接的にモニターすることが出来ない。従って、漕手がこのクラッチ軸の推進力カーブを見たときに、「アレ?」キャッチやフィニッシュであれだけ頑張って押しているのにミドル周りしか大きな力が出ていないジャンか?という感じになってしまう問題がある。(付け加えると、装置の取り付けが大掛かりなのと、実際に艇につけるのは大変)
  2. ベンドカーブ:オールのシャフトに歪ゲージを貼り、ストローク中のオールの撓り(ハンドルを引く力)をモニターする。これは、直接的な推進力ではないが、漕手がどれだけの力でオールを引いているかという点において、上記のクラッチ軸の力より直接的である。(シャフトの撓り力=オールシャフトの接線方向に漕手がハンドルを引く力)

おやじは漕手の立場から見て、上記2種類の内、ベンドカーブの方が、漕手の漕ぎ方・漕力・技量をより正確にモニターできる考える。ということで、ここではオールの引き方をベンドカーブを基に考察する。

理想のベンドカーブのイメージ:

エイトのレースペースでの漕ぎを念頭において、おやじが理想と考えるベンドカーブについて述べる。(下の図の水色に塗ったカーブ)

  1. キャッチは、エントリー後直ちに脚と腰を使って強くドライブして一気にベンドを立ち上げる。
  2. ミドルは体を後ろの飛ばす様にして、ベンドを維持・強化しながら強く長くオールをドライブしてゆく。(キャッチから一気にベンドカーブを立ち上げることが出来れば、ミドルでのベンドは、ドンドン力を増して更にベンドを大きくするというより、強いベンドを維持するイメージになると考える。)
  3. 脚のドライブが終盤になると、自ずとベンドは下がり始めるが、腰のスイングと腕を確り引いて、ベンドを出来る限り維持してフィニッシュまで確りブレードに体重を載せる。こうすることで、ベンドカーブがフィニッシュハーフで急に下がることを防止する。
  4. ハンドルが胸に当たる前まで、確り引く。これ以上は力強く引けない限界点に来たら、ハンドルを引く力を緩め、ブレードを離水してHands Awayする。

全体イメージとしてはキャッチで素早く強いベンドを造って、このベンドをキープする様にしてフィニッシュまで一気にボディードライブし、山の頂点が高く裾野が丸々太って面積の大きいベンドカーブを描く様に漕ぐのが理想と考える。

f:id:oyajisculler:20050204143955:image

ベンドカーブの不適当な例:

  1. ベンドカーブの山の頂点が高ければ良いと勘違いして、鉛筆の様に痩せたベンドカーブではボートは進まない。(仕事量は面積で決まる)先日のVPP解説でも述べたが、ブレードの圧力が増すとブレードがスリップして効率が落ちるし、相手が水なので、急に力を増してもその力を急に推進力には変えられない。(ボートは重量物を動かす競技であり、ゴルフや野球の打撃の様に比較的軽いものを、瞬間的なスピードで飛ばすものとは異なる。)
  2. 2段漕ぎ(上図の破線カーブ):キャッチで脚で強烈にドライブするのは良いのだが、その後、腰の力との連動が悪いと、肝心のミドルで中だるみでベンドカーブが落ちてしまい、最後にボディースイングでもう一回強く引きなおすというのが2段漕ぎである。腰等、体幹の力が不足していると2段漕ぎになりやすい。推進力が凸凹するので、艇の加速がギクシャクして宜しくないのと、ピークがチョコンと高いところは結局ブレードがスリップするだけで、推進力に有効に寄与しないと考える。これに加えて、2段漕ぎは尻逃げ漕ぎの結果でもあり、腰を痛める原因にもなる。

兎に角、同じ仕事量で漕ぐのであれば、凸凹の無い、綺麗で面積の大きい一山のベンドカーブで漕いで始めて期待した艇速が得られるのであり、凸凹、ガサゴソ漕いでいては、推進効率は悪いは、合わせる事は出来ないは、何も良いことがない。

ベンドカーブのモニター方法:

おやじの出身校の東大は、駒場の教養学部にある体育館に大型のローイングタンクという回流水槽をもっている。昭和40年代に設置された施設であり、もうかなり古いのだが、今でも使っている模様。ここで、年1回体力測定を兼ねて6分間のローイングタンクによるベンドカーブ計測も含めた、心肺機能等の総合体力測定を行っていた。(おやじがHC時代に復活させたが、今はやっているのだろうか?)ベンドカーブは使用するオールのシャフトに歪ゲージを貼り、アナログ式のデータ記録紙にベンドカーブをその場で記録してゆく方法をとっていた。記録されるのが紙だし、この方がわかり易いともいえる。計測後に一人ずつ、序盤、中盤、終盤と典型的なベンドカーブをコピーして貼り付け、整理し、あるべき漕ぎ方=ベンドカーブについて皆で議論した記憶がある。実艇を使って水上でベンドカーブを計測することも出来るが、1日で全員分を取るのは難しいことや、風・波などの自然の外乱要素も勘案すると、上記のローイングタンクで計測するのが良いと思う。

Concept2エルゴマシンの最新型Model-DはForceカーブがモニターできる:

さて、上記の通り、ベンドカーブは引き方をモニターする上で非常に有効であるが、計測するには時間、設備の他、人の手間(まともにやったら金がかかる)がかかるので、いつでもモニターできるものではない。しかし、C2の最新型Model-DではベンドカーブならぬForceカーブがモニターに表示できるのである。これはつい最近知ったことだが、「素晴らしい」機能と言える。(計測費用タダ!一人でチェックできる!)このモニターについては、C2社のHPに詳しく載っているが、簡単に紹介すると下の図の通りである。回転運動の実際のローイング中のベンドカーブと直線運動のエルゴのForceカーブではフィニッシュ周りの1/4付近がベンドカーブのイメージと異なるが、キャッチからミドルまでのカーブは殆どベンドカーブと同じと考えて良さそうだ。(キャッチで水を掴む技術や、フィニッシュでブレード一枚をキープし長く押し続けるというブレードワークの巧拙は、エルゴのForceカーブではこの部分の巧拙は表現できないが。。。)

エルゴを漕ぐときにForceカーブを表示させて、立ち上がりが早く、山が高く、面積の大きい、凸凹の無い、綺麗な一山を描く様に漕ぐ努力が必要である。しかも、この美しいカーブが、何も意識せずとも、毎本同じ形となる様に体で覚えることが必要である。

(新人や未熟な漕手は、一流選手のForceカーブを手本に同じカーブになる様にすると良い)

f:id:oyajisculler:20050207175909:image

以上

markmark 2007/05/24 02:25 初めまして。
突然の質問失礼致します。

都内の大学で舵手つきフォアのCOXをやっているのですが、漕手のForceカーブについて悩みがあります。

クルーの一人なのですが、Forceカーブの山が急激に上がり鉛筆のように細い山となった後に、ストローク後半で曲線が下に凸となり、見るからにいびつなカーブとなってしまうのです。

漕ぎを見ても、明らかに他のクルーよりも脚が先に終わり、その後ボディスイングに入るので、動作の連動がなされているとは言いがたい状況です。
ボディスイングを連動させるように意識してもらったところ、多少の改善は見られたのですが、決定的な改善には至っておりません。

ただ、ウエイトなどでの脚力を始めとした筋力他のクルーと比較するとはずば抜けていて、その脚力のせいで脚を早く使い終わってしまうのではと思うのですが。。

急激に力を1点に加えるような漕ぎはよくないということもわかってはいるのですが、キャッチから強く蹴るという意識でいくならばレグドライブをセーブしてもらうのは違う気がするので。。

まとまりのない文章の上、状況が把握しづらいかとは思うのですが、より理想的なForceカーブに近づけるためにはどのようなことを意識してやるべきなのでしょうか?

おやじ本人おやじ本人 2007/05/24 12:39 markさん、質問に回答します。
1)Forceカーブはこうあるべきという事を理解させる。(常に上に凸の美しく滑らかな曲線)
2)山が尖って痩せているということは、ハンドルに体重が載っていないということ。ボートもエルゴもハンドルに体重を乗せて漕ぐことを理解させる。
3)キャッチ周りは蹴るのではなく、足の裏で押す様にする。即ち太腿の前側の筋群ではなく、裏側のハムストリングスを使って太腿を下に下ろす様にしてドライブを開始すると上手く行くと思います。
本人を見ていないので、以上、一般的なアドバイスをしました。

markmark 2007/05/24 19:40 迅速な回答ありがとうございます!
クルーと話合いをして、体重を乗せるということを意識してもらえるようにしたいと思います。

ありがとうございました。

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プロフィール

oyajisculler

oyajisculler はてなダイアリープラス利用中

14年間のコーチ経験を経て、漕手に復帰した「おやじスカラー」

<お願い> このWebLogには、漕法及び漕艇用具の考察をする上で、理解しやすい様に写真等を掲載しています。この中にはFISAのHP等からダウンロードしたFISA関係者の個人が著作権を有するものがありますので、他に転用したりしない様にお願いします。
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