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昨年から乗艇練習のトレーニング効果の向上を狙ってSpeedCoachを使用している。SpeedCoachは乗艇中の艇速がリアルタイムで計測できるという優れモノだ。特に川で乗艇練習することの多いクルーにとっては、その恩恵は大きい。(川は流れがあるので正確な距離を測ることが難しいが、対水速度を計測するSpeedCoachは、流れの有無に拘わらず、艇速を計測できる)
さて、SpeedCaochは対水速度を計測するために右上の図にあるインペラーという小さなフィンを船底にに取り付ける必要がある。このフィンにはその名の通り、小さなインペラー(所謂プロペラ)が取り付けられている。ボートが走るとインペラー(マグネットが内臓されている筈)が回転し、船底の内側に取り付けられたセンサーがインペラーの回転を電流に変換する。そしてケーブルを介してSpeedCoach本体がその電流の周波数を検知して艇速に換算してモニターに表示するという仕組みだ。
ボートが進む際、船底は水の摩擦抵抗を受けながら進む。摩擦抵抗を受けるという事は、船底に接する水が船底表面に徐々に付着しながら進むということだ。この影響は舳先部分で小さく、船尾で最も大きい。(船尾では沢山の水が引き摺られているということ)
従い、同じ艇であっても、インペラーは取り付け位置によりインペラーの回転数が微妙に異なる。これを補正するのがCalibration値(CAL値)の調整だ。また、再三このブログでも書いている通り、水温が変化しても水の粘性抵抗が変化するので水温の変化に応じてCAL値を修正する必要がある。
11月の公認コーチ養成講習会でK野造船のF川社長のボートの基礎知識に関する講義があった。この講義の中でボートの抵抗成分に関する説明があった。下の数値表がその資料。(2点誤記があったので、下表は誤記を訂正したもの。)
ここではインペラーの抵抗影響を試算する上でこの資料をベースに計算を行う。
さて、インペラーはボートに取り付けられたフィンと似たモノである。上表のデータに拠れば、1X艇の場合、全抵抗8.88kgの内、フィンの抵抗成分は0.1kg(1.1%)である。インペラーの大きさは1X艇のフィンに対し1/3程度の面積ではあるが、基部に船底貼り付けの糊代台座部があることと、インペラー(所謂プロペラ)が取り付けられているので、ここでは、その抵抗影響は1X艇フィン抵抗の半分(50%)と仮定する。
さて、上記の仮定により、1X艇(超一流スカラー:7'01")の場合、その抵抗は、0.1kg * 50% = 0.05kgとなる。これを全抵抗のなかでの比率にすると0.56%(1.0056)となる。漕ぎ手の有効出力(EHP)を一定とした場合、ボートの推進抵抗と艇速の関係式に当て嵌めると、
となる。ここでは計算を簡素化する為に、インペラー取り付けによる影響は浸水面積(S)の増加と看做すこととする。これにより、インペラー取り付け(抵抗増加0.56%)による艇速(インペラー無V0=4.7506m/s)の影響は、以下の通りの計算となる。
上記の通り、インペラー取り付けによる1X 2000mレースでの影響は、タイムで1秒弱、艇差で約4m即ち、半艇身という事になる。
インペラーは1Xもエイトも同じものを船底に取り付ける。従い、上記1Xで計算したインペラーの抵抗の絶対値はエイトでも同じとなる。異なるのは艇速である。当然ながらエイトの方が速い。エイトの艇速(5.8480m/s)に於ける抵抗を計算すると (抵抗Rは速度の2乗に比例する):
これをタイム悪化影響に換算すると(1Xと同じ要領):
上記の通り、インペラー取り付けによるエイト2000mレースでの影響は、タイムで0.2秒弱、艇差で約1m即ち、1シート弱という事になる。
今回、インペラーの抵抗影響を試算した訳だが、思ったよりその抵抗影響は小さいものだと分かった。(1X艇の2000mレースで1艇身ぐらいあると思っていたが、計算上はその半分の半艇身だった)1X艇の場合は半艇身で有意の差と言えるが、エイトの場合は1シート以下なので、殆ど無視しうる影響と言えそうだ。(1シートを争うレースが想定されるなら話は別だが。。。)
なお、上記の計算は、SpeedCoachのマニュアル通りに両面テープを使ってインペラーを船底に貼り付けた場合の計算試算である。当然のことながら、テンポラリーな貼り付け要領、即ち、ガムテープ等でインペラーを貼り付けた場合は、その抵抗影響は2倍に近いものになると思う。その場合はエイトでも無視しうる影響とは言えないだろう。(もともとガムテープでベタベタ貼り付けるものではない)
以上
Drag Factor:130、60分、距離:15,081m、Ave.:1’59”4, SR:21, ストレッチャー高:4