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おやじスカラー戸田便り

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2007-11-29 水温と粘性抵抗及び艇速の関係

oyajisculler2007-11-29

10月に艇速を計測できる小道具(SpeedCoach)を購入し、シングルススカルに装着して乗艇練習している。11月下旬から水温が下がってきたが、抵抗増加がSpeedCoachの距離表示減少の形で見えてきた。(SpeedCoachは船底に取り付けたインペラーの回転数で艇速を検知する装置)

距離の誤差は、水質・水温にSpeedCoachのCal係数で修正して整合しているが、水温と抵抗及び艇速の関係について、造船工学の理論計算上、どういう関係になるのか試算してみた。(艇の抵抗は船体が水から受ける粘性抵抗が主体なので、今回は水の粘性抵抗のみで試算した)

その結果、水温5度下がると、水の動粘性係数(粘性抵抗)が約2.5%大きくなり、艇速が1%程度遅くなる結果となった。例えば、夏(25℃)に2000mを6分00秒で漕ぐエイトクルーは、冬場(10℃)では約10秒遅くなり、6分10秒となるという事。

  • 水温(℃)    抵抗   艇速
  • 10(冬場)    102.9% 99.0%
  • 15(春・晩秋)  100% 100.0%
  • 20(6月、10月) 97.4% 100.9%
  • 25(夏場)    95.1% 101.7%

下図は計算結果をグラフ化したもの:

f:id:oyajisculler:20071130012608j:image

水温と密度及び動粘性係数(ν)に関する試算内容:

  1. 船が一定の速度(V)で走る為に必要な有効出力をEHPとした場合、EHPは次の式で表される。 EHP = RV/75 (PS)
  2. 船の抵抗(R)は次の式で表せる。 R= C* 1/2ρS V^2 (ρ:密度、S:浸水面積)
  3. 抵抗係数Cは次の式で表せる。 C = (Cf + ΔCf) + Cr 但し、Cf:摩擦抵抗係数、Cr:剰余抵抗係数(造波抵抗係数)。ローイングボートの場合は、摩擦抵抗(粘性抵抗)が支配的である。
  4. 摩擦抵抗(Rf)は次の算式で求められる。Rf= Cf* 1/2ρS V^2
  5. 摩擦抵抗係数(Cf)は、次の算式(Schoenherrの式)で求められる。Cf = 0.463 * (log10(Rn))^-2.6 但し、レイノルズ数は、Rn=VL/νとなる。
  6. 有効出力一定としたときの速度(V)V = (EHP*75/(Cf*1/2ρS))^(1/3) 即ち、V ∝ ((Cf*ρ)^-1)^(1/3)

清水の水温と密度、動粘性係数(ν)の関係は以下の通り:

但し、下記はシングルスカル(V=4.00m/s, L=8.00m, 排水量=90.10kg, 浸水面積S=1.98m2)を対象とした数値:

  • 温度(℃) ** S.G. ** ρ ** ν*10^4 ** レイノルズ数 ** 抵抗係数 ** 抵抗比率 ** 抵抗値 ** 出力 ** 速度 ** 速度比率
  • (℃) ** (t/m3) ** (kg/m3/g) ** (m2/sec) ** Rn=VL/ν ** Cf ** (%) ** (kg) ** (PS) ** (m/s) ** (%)
  • 0 ** 0.99979 ** 101.95 ** 1.78667 ** 179,104 ** 0.00620 ** 110.0% ** 10.005 ** 0.5336 ** 3.9142 ** 96.9%
  • 5 ** 0.99989 ** 101.96 ** 1.51698 ** 210,945 ** 0.00599 ** 106.2% ** 9.663 ** 0.5153 ** 3.9599 ** 98.0%
  • 10 ** 0.99959 ** 101.93 ** 1.30641 ** 244,946 ** 0.00580 ** 102.9% ** 9.360 ** 0.4992 ** 4.0021 ** 99.0%
  • 15 ** 0.99900 ** 101.87 ** 1.13902 ** 280,943 ** 0.00564 ** 100.0% ** 9.091 ** 0.4849 ** 4.0412 ** 100.0%
  • 20 ** 0.99812 ** 101.78 ** 1.00374 ** 318,808 ** 0.00549 ** 97.4% ** 8.850 ** 0.4720 ** 4.0776 ** 100.9%
  • 25 ** 0.99694 ** 101.66 ** 0.89292 ** 358,375 ** 0.00536 ** 95.1% ** 8.630 ** 0.4603 ** 4.1119 ** 101.7%
  • 30 ** 0.99557 ** 101.52 ** 0.80091 ** 399,546 ** 0.00525 ** 93.1% ** 8.431 ** 0.4496 ** 4.1441 ** 102.5%

以上

ozawa tetsushiozawa tetsushi 2007/12/04 18:53 講習会では,沈の回復方法についてのコメントありがとうございました.
さて本題.水温と粘性抵抗についての素朴な質問をひとつ.ハルのほうは水温低下で粘性抵抗が増えて遅くなる,というのはヨシとして,常々気になっているのは推進器?たるブレードのほうです.粘性抵抗が増えた分,ブレードと水との関係では推進効率が少しよくなるのでは?というのはどうですか?
レーンを縦に3分割し,ハルを冷水に浮かべブレードを熱湯の中で漕ぐ,またはその逆などしたらわかるかもしれませんね.

おやじ本人おやじ本人 2007/12/05 00:23 Ozawaさん、コメント有難うございます。
仰るとおりなんですね。確かに冬場はブレードが良く固定されてスリップが減ります。その分、水中が重くなりますが、推進器としてのオールの効率は確実に上がると思います。水温低下時は船体の抵抗増加とブレード効率の改善のバランス分だけ艇速が変化することになる訳です。一方でチョッパーオールは面積が十分に大きいので、水温低下時のブレード固定感の改善(スリップ減少)の効果はそれ程大きくないかも知れません。やはり支配的なのは船体の抵抗増加の様に思われます。如何でしょうか?

みもとみもと 2007/12/08 17:50 すごい!これが知りたかったんです。惜しげなく公開して下さりありがとうございます。これからのボート界に必要不可欠なデータになると思います。月刊ローイングで取り上げて欲しいですね。

おやじ本人おやじ本人 2007/12/09 23:01 みもとさん、コメント有難う。
学生時代から冬場は幾ら強く漕いでも艇速が出ないのは分かっていたのですが、理論計算上でもその結果が出ることを改めて確認した次第です。特段目新しいものではありませんので、水温5℃の変化で艇速が1%変わるということだけ頭に入れておけばそれで十分と思います。
まあ、冬場はネットリした水の中でジックリ押しながら艇を進めるということでしょうね。それはそれでRowingの面白さでもあります。

みもとみもと 2007/12/10 20:54 『5℃で1%』。スピードコーチを付けた練習の時には重要なファクターになると思います。また、梅雨の全日本と真夏のインカレのタイム差は選手の成長には欠かせない指標になると思います。『5℃で1%』、選手・指導者ともに重要なスケールになると思います。ほんとにありがとうございます!

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プロフィール

oyajisculler

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14年間のコーチ経験を経て、漕手に復帰した「おやじスカラー」

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