外務省で在中国大使館公使を務めた宮家邦彦さんに話を聞きました。
国連総会で中国は尖閣諸島について、「日本が盗んだ」と日本を名指しで激しく非難、日本も答弁権を行使して、真っ向から反論するという異例の展開となりました。
国際社会の面前で繰り広げられた応酬劇。
日本の取るべき戦略について、外務省で在中国大使館公使を務めた宮家邦彦さんに話を聞きました。
(中国は国連という公式な場で「日本が尖閣を盗んだ」と発言しており、これは日本の行為を「犯罪」と言っているにも等しい。こういった発言というのはどうか?)
隣国を盗っ人呼ばわりするわけですからね、その国連の常任理事国のスピーチとしてはちょっと品位に欠けるんじゃないでしょうかね。
こんなことやってて、決して中国の評判はよくなると思いませんけどね。
(会場に、ほとんどほかの国はいなかったが?)
遅かったこともあるし、しかし言うべきことは言わなきゃいけませんよね。
(国連の場で、中国がこれだけ強硬な理由というのはどこにあるのか?)
1つは本国から指示があったんでしょうし、中国側が日本の態度、気に入らないのはよくわかるんですけどね、彼らにしてみれば。
しかし、もっと深く見てみると、中国の国内でね、やはり事情があったんだと思うんですよ。
ここで10月の予定が11月に、実は中国の共産党の大会が遅れてしまいましたからね。
これはやっぱり党大会が遅れているということは、まだポストの配分も含めて、いろんな人事について、コンセンサスがないということですよね。
そういった状況で混乱とまでは言いませんけれども、まだ合意がなっていない段階で、日本に対して厳しく出ないと、お前ら弱腰だという形で、むしろそういう形で、日本の問題が利用される、もしくは揺さぶりにいろいろ使われる、そういうことを避けるためにも、強硬な態度を示さざるを得なかったということじゃないでしょうか。
(国内の事情の影響が大きく?)
やはり関係があると思います。
(それに対する日本側の対応は、中国とは領土問題は存在しないと、一切妥協しないと、本当にいわば大人の対応、冷静な対応だが?)
そうですね。日本は冷静でいいと思いますしね、あれだけ言われた以上は、これはやはり答弁権を行使して、言うべきことを言い返すと。
まあしかし、日本としては総理が法の支配と、それから国際法の尊重、そして平和的な解決、こういう大義名分を、非常に崇高な大義名分でやっているわけですから、この調子で今後とも、中国が何を言ってきてもね、こういう言い方でやり返していく、これ以外方法はないと思いますね。
(今後、中国は国連という場で、どういう展開をねらっていると考えるか?)
執拗(しつよう)に今のような批判をね、繰り返してくるだろうと思いますけれども、それが来れば、また答弁権が必要であれば使えばいいし、そして同時に、ほかの国に対して、中国のさっき言ってたこと、これ、事実関係、全く違うんですよね。
ちゃんと答弁でも、答弁権で行使をして言ってましたけれども、1885年の段階でもう見つけていて、中国が言ってること、これは、ある意味で歴史の改ざんですからね。
そのことを国際社会に忍耐強く説明をしていって、そして理解を得ていかなきゃいけないと思います。
(尖閣問題だけでなく、竹島問題でも日本は、国際世論を味方につけなければならないわけだが、日本に必要なものは?)
それはね、やはり中国にせよ、韓国にせよ、この対外的な宣伝ですね、ものすごい人とお金をかけてやっていますよね。
ですからそれに、お金だけかければいいってもんじゃないけれども、やはり組織的に戦略を持って、そして、人とお金をつけて、日本の主張というものをより広く、より組織的に、そして相手よりも、より効果的に国際社会に発信していかなきゃいけない。
これは首相のスピーチがまず最初なんでしょうけれども、これを機会に、もっともっと積極的にやってもらいたいと思います。