ぼっちというのは永世中立国のようなもんだ−。渡航(わたりわたる)の人気シリーズ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公はそう言い切る。高校の級友たちには名前すら認知されていないけれど、教室内の力関係やグループ分けには精通している主人公。彼は、その特異な立場を逆手にとり、毎回、必殺仕事人さながらの暗躍で人間関係のこじれを解消していく。
ゼロ年代末より、「ぼっち」なる存在が、にわかに脚光を浴びはじめた。その奇妙に弾力性をおびた若者用語は、皮肉にも、中立の立場を捨ててひとりぼっちを抜け出したいと願う当人の気持ちすら弾(はじ)き返す。それはまるでゴム製のビリヤード球のように、ひとたび突かれれば壁に自らをぶつけて加速を始め、無音のままに社会の広さと狭さを推し測っていく。
静的だけど動的。その矛盾を生きるぼっちたちは、ぶつかる社会の壁を壊さぬよう、他人の心に踏み込まぬよう、徹底して自らを戒める。つまり、この青春小説はストイシズムの方向性において「まちがっている」のだが、その錯誤こそが青春だと開き直る潔さが、本作の最大の魅力なのである。良い意味でラノベのしたたかさが光る快作だ。 (ガガガ文庫(5)・六〇〇円)
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