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2012年9月30日(日)付

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公正取引委―もっとほえる番犬に

公正取引委員会の竹島一彦委員長が、2期10年2カ月の任期を終えて退任した。経済の停滞が続く中、公平な競争を監視する公取委の役割はますます重要になっている。[記事全文]

対ロ外交―重層的に関係広げよ

12月に予定される野田首相のロシア公式訪問に向け、この秋、日ロ間で重要な政治対話が続く。両国関係の深化と、領土問題に揺れる北東アジア情勢の安定に生かしていきたい。先ごろ[記事全文]

公正取引委―もっとほえる番犬に

 公正取引委員会の竹島一彦委員長が、2期10年2カ月の任期を終えて退任した。

 経済の停滞が続く中、公平な競争を監視する公取委の役割はますます重要になっている。

 その意味で、野田内閣が政治的な混乱を恐れ、竹島氏の後任の人事案を先の国会で示さなかった責任は大きい。早く正常化すべきだ。

 竹島氏は、歴代最長の在任期間もさることながら、存在感でも異例のトップだった。

 05年には独占禁止法の改正にこぎつけ、刑事告発に向けた強制的な調査権を手にした。さらに、課徴金を引き上げつつ、違反を自主申告した企業は減免する制度も導入し、アメとムチで執行力の強化をはかった。

 「ほえない番犬」から「闘う公取」へ。その強い姿勢は、罰則強化を嫌う産業界やその意を受けた国会議員らから、「竹島委員会」と煙たがられた。

 こうした変化は、竹島氏個人の力以上に、時代の要請だったといえよう。

 官庁主導の産業政策や裁量行政はとうに行き詰まり、新たな活力の担い手を育てるうえで公正性や機会の平等が一段と問われているからだ。

 とはいえ、まだ公取委の機能が十分に生かされているとはいえない。

 好例は、先日発表された「電力市場における競争の在り方について」とする報告書だ。

 発送電分離や小売り部門の自由化が必要と指摘している。政府内でも議論されているが、独立性の高い公取委が提言した意味は小さくない。

 ただ、同様の指摘は06年の報告書にも盛り込まれていた。「自由化の取り組みが効果を上げていない」と断じ、電力業界や経済産業省は強く反発した。

 まさに「闘う公取」の面目躍如だったが、その後、有効な手を打てず、結果的に原発事故が起きるまで電力改革の論議にはつながらなかった。

 健全な市場の育成を阻害する要因を徹底的に洗い出し、改善が見られなければ、しつこく追及する。「ほえる番犬」としての機能をさらに高めてほしい。

 現在、公取委は委員長を含め2人の欠員が生じており、当面は3人による運営を余儀なくされる。野田政権は次の国会で人事案とその選考理由をきちんと示す必要がある。

 竹島氏は退任会見で「車を押しながら坂をのぼってきたようなもの。手を離したらずるずると後退する可能性がある」と懸念を示した。野田政権は肝に銘じるべきだ。

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対ロ外交―重層的に関係広げよ

 12月に予定される野田首相のロシア公式訪問に向け、この秋、日ロ間で重要な政治対話が続く。両国関係の深化と、領土問題に揺れる北東アジア情勢の安定に生かしていきたい。

 先ごろ、日ロの両外相が会談し、首相の訪ロ時に、経済協力や北方領土問題で成果文書をまとめることで合意した。10月には外務次官級協議があり、領土問題交渉を仕切り直す。

 さらに11月にはシベリア・極東開発を担当する実力者、シュワロフ第1副首相が来日する。

 ロシアは今月上旬、極東のウラジオストクでアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を主催したばかりだ。

 欧州にかたよっていた天然ガスや石油の輸出先を、アジア・太平洋にもふり向ける。この地域の旺盛な経済活力を、人口も産業も希薄なシベリア・極東に呼び込み、開発を進めるのがねらいだ。

 日本への一連の外交攻勢も、プーチン大統領が描く「ユーラシア国家」としての発展を考えたとき、日本からの投資や技術が欠かせないことがある。

 「脱原発」に動く日本にとっても、ロシアの豊富なエネルギー資源は魅力的だ。

 ただ、ロシアが計画する東シベリアなどでのエネルギー開発は、産地が内陸の奥に位置し、開発や輸送のコストが高い。資源産業への過剰な国家介入というロシア独自の問題もある。

 採算性やビジネス環境の整備に十分に納得のいく説明をロシア側から受けつつ、投資や技術協力を進めるべきだろう。

 安全保障面の分野でも、双方の利害の一致点は少なくない。

 領土問題で日本が中国、韓国と対立する現状は、この地域との関係強化をめざすロシアにとっても懸念材料だ。竹島、尖閣の問題で中立を唱え、平和的解決を望む立場をとるのも、そのためだ。

 中国の経済的・軍事的な台頭は、かつて中国から広大な領土を獲得し、シベリア・極東で長い国境を接するロシアにとっても潜在的な脅威だ。

 日ロは海上安全の確保などで協力を深めている。北東アジアの安定に向け、北朝鮮の核開発問題などでも連携を強めたい。

 首相の公式訪ロは、小泉元首相いらい10年ぶりだ。

 成果文書は経済、安保、地域政策など、あらゆる分野で協力を重層的に発展させる具体的な内容のものとしたい。

 その着実な実行が、プーチン氏のいう北方領土問題での「相互に受け入れ可能な解決」に近づく道となる。

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