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【スポーツ】

吉田沙保里が世界13連覇

2012年9月30日 紙面から

世界選手権女子55キロ級を制し13大会連続世界一を達成。父栄勝さん(右)と栄和人監督(左)に担がれ喜ぶ吉田沙保里=カナダのストラスコナカウンティで(共同)

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◇レスリング女子世界選手権<第2日>

▽28日▽ミレニアム・プレイス(カナダ・ストラスコナカウンティ)▽55キロ級、72キロ級

 「世界最強の女」が、レスリング界を完全統治した。55キロ級の五輪3大会連続金メダリスト吉田沙保里(29)=ALSOK=は、決勝で昨年5位のヘレン・マルーリス(米国)にフォール勝ちして10連覇。五輪と合わせて世界大会13連覇を達成し、「人類最強」と呼ばれた男子グレコローマンスタイル130キロ級のアレクサンドル・カレリン(ロシア)の12連覇を抜いて世界一になった。吉田は世界大会連勝数でもカレリンの61を超える62連勝。20歳代最後の試合で金字塔を打ち立てた。

 スイッチの入った絶対女王に敵はいなかった。大記録が懸かった決勝で吉田は、第2ピリオド(P)52秒に21歳の新鋭をマットに沈め、世界大会では自身初となる4試合連続フォール勝ちで優勝。「カレリンの記録を超えることができてうれしい。(全試合フォールは)自分でも信じられない。攻める気持ちが上回っていたんじゃないかな」。右拳を何度も握り、世界一の味をかみしめた。

 カナダ第6の都市エドモントン郊外にある地方会場。観客は300人程度と、3連覇したロンドン五輪の熱狂とは比ぶべくもない。それでも吉田のモチベーションは下がらなかった。初戦の2回戦と3回戦を難なく突破して臨んだ準決勝がターニングポイント。欧州女王のシニシン(ウクライナ)にマット際で投げられ3失点し、第1Pを落とした。

 このとき、吉田は同五輪女子48キロ級決勝で同様に先制された小原日登美(自衛隊)の戦いぶりを思い起こし、残り2Pに懸けた。「2、3(P)と気持ちをしっかり持てば絶対大丈夫、と思って戦い、そこから火が付いた。相手の息が上がっていたのも分かった」。第3P終了16秒前、スタミナ切れした相手を押さえ込んで勝負を付けた。決勝も余裕の勝利。吉田の強さに酔いしれた会場のボルテージは、いつしかロンドン並みに上昇していた。

 この1年、苦難が続いた。ライバルに研究し尽くされ、昨秋の世界選手権以降は思い切りの良さが消えた。5月のワールドカップで4年ぶりの黒星。「練習してるんやけど身が入らない」。母・幸代さん(57)に愚痴ったこともあったが、悩める女王はシンプルな結論にたどり着いた。それは、勝利そのものにこだわることだった。

 ロンドン五輪では無謀な攻めを一切やめ、一撃必殺のタックルで加点。4試合無失点で勝ち、3たび頂点へ。五輪後はテレビ収録やイベント出演に忙殺され、練習時間は3分の1に減った。しかし、16日からの代表合宿で1週間集中して鍛錬。ロンドンでの勝ち癖を取り戻すことは、そう難しくなかった。

 来年から東京にも拠点を置き、自衛隊などに出向いて新たなレスリングを模索する。「カレリン超え」を終点にする気などさらさらない。「次目指すならV14。どんどん記録を上げていきたい。そして、死ぬまで抜かれない記録をつくるのが目標」。14連覇、15連覇の先に見据えるのは16年リオデジャネイロ五輪での五輪4連覇。最強伝説は、まだ完結しない。

 

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